研究実績の概要 |
ヒトRiPS細胞の作製 まず安全性が高いiPS細胞を作成するため、mRNA(KLF-4, c-MYC, OCT4, SOX2)のみを利用してヒト線維芽細胞をリプログラミングしヒトRNA-iPSC(RiPSC)を作成した。これらの細胞は単層培養で多能性細胞の形態をとっており、免疫染色により多能性細胞のマーカーであるOCT4及びSOX2の発現が確認された。 RiPS細胞から脊髄神経幹細胞の誘導 単層培養されたヒトRiPS細胞を脊髄神経幹細胞誘導培地(N2B27培地, LDN-19318, SB-431542, CHIR-99021 FGF2及びFGF8;Kumamaru et al, Nat Methods, 2018)内で培養すると神経系細胞のマーカーであるSOX1,SOX2及び中胚葉系細胞のマーカーであるTの遺伝子発現上昇が認められた。誘導開始3日目にヒトRiPS細胞はSOX2+TBXT+神経中胚葉前駆細胞に分化しており、SOX2+PAX6+神経上皮前駆細胞は認めなかった。また遺伝子発現解析によりこれらの細胞は脊髄固有のHOX遺伝子(HOX6-9)を発現していることが確認された。誘導開始後10日目に90%以上の細胞がCDX2+SOX2+の脊髄神経幹細胞に分化しており、遺伝子発現解析でもこれらの細胞はヒト胎児由来の脳神経幹細胞ではなく脊髄神経幹細胞に類似した遺伝子発現を示した。 これらの細胞は長期培養後(3か月)も遺伝子発現解析によって長期培養後も脊髄の性質を保っていることが確認され、免疫染色により神経幹細胞のマーカーであるSOX1,SOX2,Nestin(Nes)を発現しておりヒトiPS細胞由来の脊髄神経幹細胞の長期培養に成功した。またこれらの細胞がDCX陽性のニューロンに分化できることも確認された。
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