研究課題/領域番号 |
20K09418
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
大槻 周平 大阪医科大学, 医学部, 講師 (20589840)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 半月板 / scaffold / シート / ポリグリコール酸 |
研究実績の概要 |
半月板の機能温存は変形性膝関節症の予防に重要である。現状、本邦では半月板損傷に対する治療法は切除術または縫合術の選択肢しかない。半月板組織は血流に乏しく、自己修復能力が低いため、縫合術後の再断裂や治癒不全による再手術となることがしばしばある。そこで我々はこれまで半月板の新規治療法の研究を進めて、ミニブタの半月板にPGAとP(CL/LA) を使用したscaffoldの良好な治療成績を報告し、ウサギ半月板水平断裂を人工硬膜シートでラッピングする治療法の可能性を報告した。今回は半月板ラッピング治療に最適と考えたPGA不織布とfilm状P(CL/LA)を接着した厚み350μmの2層性シート状scaffold(Meniscus Sheet Scaffold; MSS)を設計し、MSSによる半月板ラッピング治療の有効性を検討した。In vitro試験としてMMSの引張強度および細胞生存率分析を行った。In vivo試験としてウサギの内側半月板前節に2mm円柱欠損を作成し、欠損群(Defect群)とMSSでラッピング治療を行った群(MSS群)とで比較した。両群を2、4、8、12週で半月板を、8および12週で大腿骨軟骨を組織学的に評価した。その結果、MSS群では2週から4、8週にかけて表層から欠損部に遊走する多数の細胞を認め、12週では良好な再生組織を認めた。細胞増殖能を示すKi-67陽性細胞率は再生組織の表層で高く、半月板辺縁の血流が豊富な領域からの細胞遊走が示唆された。大腿骨軟骨の変性はDefect群では進行していたが、MSS群では優位に抑制されていた。本研究結果から、半月板損傷に対するMSSを用いたラッピング治療は半月板損傷部の再生を促し、軟骨変性を抑制していた。治療に難渋する半月板損傷に対して新規治療となりうる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
半月板損傷に対する新規治療法として、シート状scaffoldを用いたラッピング治療が注目されている。我々は半月板治癒効率の更なる向上のために、ポリグリコール酸(polyglycolic acid; PGA)とポリL乳酸-カプロラクトン共重合体(poly L-lactic acid and caprolactone; P(LA/CL))からなる2層性新規半月板シート状scaffold(Meniscal Sheet Scaffold; MSS)を開発した。組織学的修復、力学強度など一定の結果が得られ論文ですでに1本報告した。
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今後の研究の推進方策 |
MSSを用いたラッピング治療は早期からextrinsic healingによる半月板の治癒を加速させ、最終的に良好な細胞外基質の再生を得た。また半月板の良好な組織学的修復と相対する軟骨変性の進行抑制を認め、機能的修復も良好であることが示唆された。本研究の動物実験モデルはヒト半月板損傷の断裂形態とは異なるため、さらなる研究が必要である。 異なる断裂形態で、半月板scaffoldを用いた引っ張り、圧縮などの力学強度試験及び圧分散をセンサーを用いて検討を深めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内及び国際学会参加を予定していたが、コロナ禍にて学会活動が全くできなかった。よって旅費などが使用できず、次年度使用額が生じた。組織学的検討に注力し、力学検討を次年度に集中して進めていく予定であり、それにかかる、ロードセルや引張治具を購入する予定である。
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