近年、半月板損傷に対する治療としてシート状scaffoldによるラッピング治療が報告されている。治癒効率を向上するため、ポリグリコール酸(PGA)とポリL乳酸-カプロラクトン共重合体(P(LA/CL))からなる2層性新規半月板シート(Meniscus Sheet Scaffold; MSS)を開発した。 【方法】MMSの引張強度及び細胞生存率分析を行った。in vivo試験としてウサギの内側半月板前節に2mm円柱欠損を作成し、欠損群(Defect群)とMSSでラッピング治療を行った群(MSS群)とで比較した。評価時期は術後2、4、8、12週とし、肉眼的及び組織学的に評価を行った。再生組織はSafranin-O/Fast Green染色を用いてIshida scoreで評価した。細胞増殖能の評価を抗Ki-67抗体の免疫組織学的分析で行った。大腿骨内顆軟骨はOARSI scoreで評価した。 【結果】MSSの引張強度は、初期時点から加水分解後4週間まで90%以上維持され、8週間後では60%以上の強度が維持されていた。細胞生存率は2週から4週にかけてMSS上の生細胞の増加を認めた。in vivo試験では肉眼的評価で周囲の炎症は認めず、欠損部は徐々に縮小傾向だった。Ishida scoreは術後のすべての時点でMSS群はDefect群に比べて有意に改善していた。Ki-67陽性細胞率はMSS群で有意に高かった。OARSIスコアはDefect群の方が有意に高く、MSS群では軟骨変性は抑制されていた。 【結論】MSSを用いた半月板ラッピング治療は、劣悪な半月板損傷の環境を改善することで、損傷部への細胞取り込みと増殖を促進し、早期から半月板治癒の促進効果が明らかとなり、半月板の良好な組織学的修復と相対する軟骨の変性進行抑制に有用な可能性が示唆された。
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