報告者らはMinIONを活用した細菌の迅速同定法を確立し感染症診断に大きな変革をもたらすことを目標に、頚椎術後早期の患者を対象に検体の採取、sequencingを行い、術後早期感染の検出に有効であるかの検証を行ってきた。 現在我々の患者抽出のプロトコールとして、80歳以上の高齢者、糖尿病、アレルギー性皮膚炎、抗リウマチ薬、免疫抑制薬の内服などの免疫機能低下を来す併存症を有する患者の中から、頚椎椎弓形成術・頚椎固定術を施行した症例に対して、術後1日目の硬膜外ドレーン廃液を採取し、その採取検体の一部をコントロールとして一般細菌培養検査を、また残りをMinIONを用いたDNAシークエンスを行い、SSI発生症例における起炎菌との関連性を確認すること計画であった。 2020年度の報告で非感染例における偽陽性検出がなく、特異度が高い検査手法である可能性を示したが、新型コロナ感染症による症例数の低下により、SSI例がなく、感染症例のデータ蓄積が課題であった。 2021年度も頚椎術後のSSI発症例がなく、研究の大きな進行はなかったが、抽出症例の範囲拡大も念頭に置き、引き続きSSI発症例の症例数を蓄積していく予定とした。 2022年度は頸椎に限らず、対象手術を拡大したが、当院の脊椎手術の特色として低侵襲脊椎手術(MISt)を用いることから、ドレーン留置症例がほとんどなく、またそれらの感染例も認めなかった。 2023年度も前年度と同様で研究対象が得られず、予定していたMinIONを用いた周術期における早期インプラント感染診断法を確立できずに終了となった。
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