研究課題
令和4年度は、AVP-hM3Dq-mCherry Tgラットを用いて脊髄神経結紮損傷(SNL)モデルを作成し、クロザピン N-オキシド(CNO)投与によるAVPニューロンの活性化後の機械刺激および熱刺激に対する痛覚閾値の経時的変化を評価した。CNO投与群において機械刺激および熱刺激に対する痛覚閾値が有意に上昇した。さらに、AVP-hM3Dq-mCherry TgラットにSNLを行い、AVP V1a受容体拮抗薬を腹腔内または脊髄腔内に前投与した後にCNOを腹腔内投与し、機械刺激および熱刺激に対する痛覚閾値の経時的な変化を評価した。V1a受容体拮抗薬を腹腔内投与ならびに脊髄腔内投与の両群において、CNO投与による痛覚閾値の上昇が阻害された。以上より、AVPが中枢性ならびに末梢性のV1a受容体を介して疼痛調節に関与することが示唆された。AVPが下行性疼痛抑制系を賦活化しうるのかを検討するために、無処置のAVP-hM3Dq-mCherry TgラットにCNOまたは生理食塩水を投与し、90分後に灌流固定を行い、脳を提出した。脳切片を作成し、神経活性の指標として汎用されるFosタンパクを指標に、下行性疼痛抑制系に関連する背側縫線核のセロトニン作動性ニューロン、青斑核のノルアドレナリン作動性ニューロンおよび脊髄後角の抑制性介在ニューロンの神経活性の評価を行った。CNO投与群において、それぞれのニューロンにおいて、Fos陽性ニューロン数が有意に増加した。以上より、AVPニューロンの活性化により下行性疼痛抑制系が賦活化する可能性が示唆された。これまでの研究内容をまとめ、第37回日本整形外科学会基礎学術集会及び日本生理学会第100回記念大会で発表を行った。さらに、Scientific Reports誌に投稿し、受理され掲載されることとなった。
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Scientific reports
巻: 12 ページ: 13046
10.1038/s41598-022-17477-5.