研究課題/領域番号 |
20K09422
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
佐藤 慎哉 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 医長 (30464564)
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研究分担者 |
比留間 徹 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 部長 (20254188)
星野 大輔 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 部長代理 (30571434)
鷲見 公太 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 医師 (30716733)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨転移 / 脂肪細胞 / 癌微小環境 |
研究実績の概要 |
2021年度は、2020年度に樹立した脂肪髄誘導モデルを用いて、骨転移実験を行った。ルシフェラーゼ発現マウス由来癌細胞を血管内に注入し、脂肪髄誘導が骨転移頻度に影響を与えるかを検討した。IVISを用いて脂肪髄を誘導した骨への転移巣の腫瘍径と、脂肪髄を誘導していない骨への転移巣の腫瘍径を比較した。またマウス骨転移巣から凍結組織標本を作製し、骨転移がんと親株の癌細胞から蛋白質を抽出し、質量分析を行った。その結果、骨転移巣に特異的に発現する蛋白質を複数見出した。現在これらの中から機能的に骨転移巣における癌細胞の生存・増殖を支持する因子を探索している。細胞実験では、2020年度に確立した初代培養マウス骨髄脂肪細胞・皮下脂肪細胞と癌細胞の共培養を行い、増殖をCCK8アッセイで確認した。また、脂肪細胞と癌細胞を共培養したときに脂肪細胞側・癌細胞側で特異的に発現する遺伝子をRNAseqで検出、Public databaseを参照し、癌細胞の生存・増殖を支持する脂肪細胞由来因子解析した。上記の研究結果から、現在特定の脂肪細胞由来因子を抽出し、因子の発現および因子が関与するシグナル伝達経路が癌細胞に与える影響を検討している。一方、癌患者さん由来の骨転移巣組織を用いて、癌細胞の骨髄脂肪組織への浸潤様式、および浸潤先進部における浸潤関連因子(癌関連線維芽細胞、免疫細胞)の病理組織学的検討を行った。約140例の骨転移病理組織標本から、浸潤先進部の確認できた約30例を用いて解析を行った。さらに脂肪細胞の癌細胞に対する役割を、乳癌病理組織標本画像の機械学習により解析し、脂肪細胞を含む間質細胞の形態的特徴が、癌と判定する際に重要であることを見出した(PMID33934277)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の計画通り、動物実験、細胞実験とも系を確立し、骨髄脂肪細胞の癌細胞の生存・増殖・転移への影響を検討することができた。また予定していたゲノム解析、プロテオミクス解析も完了した。高脂肪食実験は、高脂肪食が非常に高価であり、本研究の研究費では遂行が困難であったが、放射線照射による脂肪誘導で本研究計画に必要な実験は補完可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は研究計画3年目であり、癌患者さんの骨転移組織を用いた研究成果を論文化する予定である。また細胞実験、動物実験の研究成果を、昨年度見出した脂肪細胞由来因子を中心に追加実験を行い、学会発表、論文化を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が計画していた検体採取に関与する費用が当初より低く抑えられたことから、次年度使用額が生じた。今年度、本研究に関与する抗体試薬などの消耗品費、および論文投稿に関連する費用に用いる予定である。
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