研究実績の概要 |
最終年度は、非アルコール性肝疾患 (NASH)モデルでの検討を実施した。これまで、血管内皮細胞特異的CNP過剰発現マウス(Tg)を用い、2種のNASHモデルでの検討を実施したが、今回は、これらよりヒト病態に近いモデルとして知られる、高脂肪、高フルクトース、高コレステロール食によるNASHモデルを用いた。肝臓組織病変に対するTgの作用は、高脂肪食性モデルと比較すると改善効果は弱く、CDAAモデルに近い作用であった為、まず全身性の作用に着目した。具体的には、肝臓組織におけるTgの炎症マーカー(IL-6)発現量の抑制傾向に注目し、血中のIL-6濃度を測定した。しかし、IL-6濃度は、本モデルでは検出感度以下であり、遺伝子型による違いは見いだせなかった。これは、本モデルでのIL-6遺伝子発現増加量が、他の炎症性マーカー(F4/80, MCP-1)と比較して低い事実と一致していた。次に、NASH合併症として注目されている腎障害に対する作用を検討した。まずは、CNPの主要作用である線維化に着目し、線維化の起点となる萎縮部位を調べるとTgでその数が減少しており、CNPの線維化抑制作用が示された。 一方、CNP同様の骨代謝・肥満調節因子であるBMP-3bの作用について本モデルで検討した。昨年度、BMP-3bの脂肪肝炎抑制作用は報告したが、CNPとの関連も含め、そのメカニズムは不明である。本モデルでの肝臓のBMP-3bの発現レベルを調べると、NASHにおいて顕著に増加していた。また、CNP-TgとWt間でのBMP-3b発現量の違いは認められず、肝臓での、CNPとBMP-3b、両骨代謝調節因子の遺伝子発現レベルでの相互作用はなく、それ以外の部分での作用が示唆された。 BMP-3bの検討については、CNPとの関連、前述のNASH由来の腎障害への作用も含め、本モデルを用い、今後詳細な検討が必要である。
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