研究課題/領域番号 |
20K09433
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西田 圭一郎 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (80284058)
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研究分担者 |
佐藤 康晴 岡山大学, 保健学域, 教授 (00579831)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / CD30 / ブレンツキシマブベトチン / アポトーシス / コラーゲン抗体誘導関節炎モデル / 滑膜線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
TNFαレセプターファミリーのうちの一つであるCD30は、Hodgkinリンパ腫等に高率に発現し治療ターゲットとして臨床利用されている表面抗原である。関節リウマチ(RA)患者の血清および関節液中で、CD30から切断された外部ドメインである可溶性CD30が有意に上昇していることが報告されている。しかし、これまで滑膜組織でのCD30の発現とその発現刺激、病的意義については十分研究されていない。本研究ではCD30がRAの新規治療標的になり得るか検討を行った。 変形性関節症(OA)患者およびRA患者の手術時に採取した滑膜組織に対し免疫染色にてCD30の発現を検討し、OA患者滑膜に対しRA患者滑膜で、CD30の高発現を認めた。蛍光二重免疫染色で検討すると滑膜組織でCD30は形質細胞、B細胞、滑膜線維芽細胞での発現を認めた。in vivoではRAモデルであるコラーゲン抗体誘導関節炎をマウスに惹起し、ブレンツキシマブ・ベトチン(BV)の投与を行い関節炎に対する治療効果を関節腫脹臨床スコア、体重、血清中のSAA, IL-6, TNFαに加え両足部組織標本に対して各種染色方法で評価した。高濃度投与群では関節腫脹に基づく臨床スコアが有意に低下し、血清中のSAAも低値であり炎症が抑制されていることを示していた。病理組織検査では滑膜増生や骨軟骨破壊が高濃度投与群で抑制されていた。 本研究の結果は、RAの滑膜組織では活発な炎症が惹起されている状態で、形質細胞や滑膜線維芽細胞にCD30が発現しており、BV投与によりCD30発現細胞にアポトーシスが誘導され、滑膜増殖による関節破壊を抑制する可能性があることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RAの滑膜組織では活発な炎症が惹起されている状態で、形質細胞や滑膜線維芽細胞にはCD30が発現していること、CD30発現細胞を標的とするBVの投与により動物モデルでは滑膜増殖による関節破壊を抑制する可能性があることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
RA患者から採取した滑膜組織から滑膜線維芽細胞(FLS)を培養し、サイトカイン刺激によるCD30の変化をPCR検査およびフローサイトメトリーにて検討を続ける。また、FLSを炎症性サイトカインであるTNFα及びIL-1βで刺激すると、PCR検査ではCD30の発現の増加が確認されている。さらに、フローサイトメトリーではCD90でゲーティングした細胞において、サイトカイン刺激によりCD30陽性率が増加したことを確認しており、さらにCD30陽性細胞のプロファイリングを行っていく。また、CD30発現細胞をアポトーシスへ誘導することのできる抗CD30抗体薬物複合体であるブレンツキシマブベドチン(BV)をFLSに投与し、サイトカン刺激の有無によるアポトーシス誘導の検討をカスパーゼアッセイ、TUNEL染色で行っていく。 また、循環血液中のリンパ球がCD30を発現しており、薬剤の影響を受けた可能性がある。まずは末梢血からT細胞を分離し、サイトカインによる活性化を行ってTh17細胞に分化誘導してCD30、CD30Lの発現を検討する。発現がみられる場合、BVの活性化T細胞に対する効果を上記同様に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学院生の異動とコロナ感染症に対する蔓延防止措置のため、研究室への出入りが制限された。研究の実務は別の大学院生に引き継がれ、引き続き今年度までに得られた知見の検証実験と論文Peer reviewで指摘された問題点の解決に向けたin vitroの実験を行っていく。具体的には、循環血液中の活性化リンパ球にCD30, CD30Lが発現しているかどうかについて検討を行い、BVがin vivoで有効性を示した機序についてさらに解析をすすめる。
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