研究課題/領域番号 |
20K09434
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石川 正和 広島大学, 医系科学研究科(医), 寄附講座准教授 (60372158)
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研究分担者 |
味八木 茂 広島大学, 病院(医), 講師 (10392490)
中佐 智幸 広島大学, 病院(医), 講師 (60467769)
亀井 豪器 広島大学, 病院(医), 助教 (60633039)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロニードルアレイシート / 関節軟骨 / 軟骨再生 / ドラックデリバリー |
研究実績の概要 |
本研究では、吸収性素材を基材としたマイクロニードルアレイシートを用いた軟骨修復・再生療法の開発およびドラッグデリバリーによる軟骨再生治療の開発を目指している。日本で唯一保険収載されている軟骨再生医療の自家培養軟骨移植術でも、移植部周囲へのコラーゲン膜の縫合が必要であり、軟骨組織への侵襲と手技の煩雑さが課題である。そこで無痛針技術のマイクロニードルを配列した吸収性被覆シート(マイクロニードルアレイシート)を軟骨組織に直接貼付、固定する技術開発を目指している。 2021年度はマイクロニードルアレイシートの関節内への貼付とその実現可能性に関して開発元であるシンクランド株式会社とウェブ会議を行った。これまでに軟骨組織を含む軟部組織として術中に得られるヒト半月板組織を用いて、予備実験を行っている。マイクロニードルの固定性に関するデータを共有し、その仕様、技術開発に関して議論している。これらを元に、関節内投与が可能な厚みのPGA(ポリグリコール酸)シート上へのマイクロニードルを作製し、吸収性素材によるマイクロニードルアレイシート作製を目標に研究開発を進めているとことである。また、より低侵襲の軟骨修復技術の開発を目指して、白色家兎大腿骨滑車部に再現性の高い骨軟骨欠損モデルを作製し、細切軟骨組織を欠損部に移植後、PGAシートとブタコラーゲン膜を被覆材として使用し、肉眼的、組織学的評価を開始している。これまでに、被覆材およびその固定材により組織修復に差があることが明らかになってきており、今後詳細な評価を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は共同研究をしているシンクランド株式会社から開発中のマイクロニードルアレイシートのサンプルを供給頂いたが、関節内に投与可能な厚みでなかったため、軟部部組織で軟骨成分を有するヒト半月板の切除サンプルを用いてその固定性を確認した。マイクロニードルの組織への刺入と固定はある程度可能であることが明らかになっている。一方、厚みの問題は共同研究を行っているシンクランド株式会社で引き続き研究開発を行って行く予定となっている。当初予定していたマイクロニードルアレイシートの作製が進まず、家兎の関節内に埋植できていないため、やや遅れていると判断した。 本年度においては日本白色家兎大腿骨滑車部骨軟骨欠損モデルを作製し、細切軟骨組織を移植している。2020年度の経験より、さらに安定し、再現性のよいモデル作製を行うために、径8mmの骨軟骨欠損を作製した。細切軟骨組織を欠損部に充填し、PGAシートとブタコラーゲン膜を被覆材として使用し肉眼的、組織学的評価を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降は、シンクランド社のマイクロニードルアレイシートの開発状況に合わせて、引き続きモデル作製とマイクロニードルアレイシートの移植を目指す。十分な試料の提供が難しい場合は、現在進行している、すでに臨床で使用されているPGAシートやコラーゲン膜を被覆材として用いて移植を行い、細切軟骨組織と組み合わせることで、軟骨修復・再生における安全性、有効性を白色家兎モデルにて検証していく。ドラッグデリバリーに関しても同様にマイクロニードルアレイシートの開発状況をみながら、ラット関節軟骨変性モデルにおいて既存の被覆材を用いて検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロニードルアレイシート作製に難航しており、動物実験が予定より遅延したため、動物購入費が少額になったことに加え、それに付随する組織作製、評価にかかる費用が少なくなったためと考える。2022年度は動物モデルを変更し、より安定したモデル作製を行うとともに、モデル作製を追加し、その評価を進めていく予定である。
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