研究課題
2年次の本年度は、骨粗鬆症性新鮮椎体骨折(Osteoporotic Vertebral Fracture:以下OVF)の予後予測システムのAI実装に取り組んだ。OVF研究データベースより新鮮OVFと診断された症例データの中から受傷後6ヶ月時点で遷延癒合を認めた101例(平均年齢:78.2歳、女性:80例)及び骨癒合を認めた101例(平均年齢:77.0歳、女性:84例)を抽出し、受傷から2か月以内撮影されたMRI T1・T2強調画像それぞれ202スライスを対象とした。まず骨折椎体とその周囲をcroppingし180×180となるようにゼロパディングした。さらに学習時はAugmentationによるデータ拡張を行った。学習にはImagenetで学習済みのEfficientNetB2を用いた。モデルの評価は10分割交差検証を用いて行った。T1・T2強調画像それぞれに基づくCNNの予後予測能について受信者動作特性(ROC)曲線を描き、ROC曲線下面積(AUC)を算出し遷延癒合予測における正確度、感度、特異度を求めた。新鮮OVFにおける遷延癒合予測においてT1強調画像に基づくCNN分類期のAUCは0.71、正確度は0.67、感度は0.81、特異度は0.52であった。T2強調画像に基づくCNN分類期のAUCは0.72、正確度は0.68、感度は0.78、特異度は0.60であった。MR画像を用いOVFの遷延癒合予測においてCNN分類器の診断能はmoderateであった。本技術は骨粗鬆症性骨折の中で最も頻度が高い椎体骨折の一般診療現場において治療選択の一助となり、健康寿命延伸への寄与が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画は単純X線画像からの骨粗鬆症性新鮮椎体骨折(Osteoporotic Vertebral Fracture:以下OVF)の検出、新鮮骨折と陳旧性骨折の判別であったが、当教室のOVF研究データベースにある画像の撮影時期が10年以上の期間や20施設以上から収集したデータであるため、均質なものでなかったり、撮影条件や脊柱変形のため、AIによる自動検出がうまくいかなかった。そこで、初年度にMRI画像をターゲットにしたことにより、想定以上の成果を得ることができ、2年次の本年度も引き続き、高精度なOVF予後予測システムへのAI実装が可能であった。現在、本成果の公表中であり、学術国際誌へ投稿中である。
引き続き、単純X線に関してAIエンジニアと膨大なデータクレンジングを行い、アノテーション方法の改良などを行っていく。当初の目的通り、より実用性の高い形での社会実装を目指していく。また、当教室の強みであるMRI画像データベースを用いて新鮮OVFと転移性骨腫瘍、感染性脊椎炎のAI応用自動鑑別診断システムにも挑戦している。超高齢社会で重要な3つの代表的病的脊椎骨折の鑑別ができれば、高齢者医療の改善に寄与できると考えている。
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