研究課題/領域番号 |
20K09441
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
西田 淳 東京医科大学, 医学部, 教授 (20198469)
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研究分担者 |
畠中 孝則 東京医科大学, 医学部, 助教 (00869571)
鎌滝 章央 弘前大学, 医学研究科, 助教 (60360004)
三又 義訓 岩手医科大学, 医学部, 助教 (40740717)
永井 太朗 東京医科大学, 医学部, 助教 (20836192) [辞退]
立岩 俊之 東京医科大学, 医学部, 講師 (00424630)
多田 広志 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50593638) [辞退]
市川 裕一 東京医科大学, 医学部, 臨床助教 (00941147)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 屈筋腱腱鞘炎 / PIP関節屈曲拘縮 / 肉眼所見 / CT画像所見 / 組織学的所見 / 腱・腱鞘間滑走抵抗 |
研究実績の概要 |
2021年度までに臨床的評価を行ってきたPIP関節の完全伸展が不可能な重症の屈筋腱腱鞘炎に対し、PIP関節部尺側のみに小皮切を加え、浅指屈筋腱(FDS)の尺側半腱を付着部で切離後A1 腱鞘部に引き出し摘出するulnar superficialis slip tendon resection(USSR)を施行した例における、摘出半腱と、同時に摘出したA1腱鞘間の滑走抵抗を計測した。 FDS のA1 腱鞘部より近位部をA0群、A1~A2腱鞘部をA1群、A3腱鞘部をA3群として、A1 腱鞘間との滑走抵抗を計測し、各群間を対比した。FDSとA1腱鞘との接触角度は20°、30°、40°、50°、60°とした。計測はMayo Clinicの生体工学研究室から導入した組織間抵抗計測装置を用いた。 接触角度20°、30°、40°では各群間に有意差はなかった。しかし、接触角度50°、60°ではA1 群はA0群、A3 群に比し有意に滑走抵抗が大きかった。 なお、2021年度までに採取したデータを用いて「市川裕一、西田淳、畠中孝則、永井太朗、松林純、山本謙吾. 弾発指に対する浅指屈筋腱尺側半腱切除施行例の臨床成績と組織所見. 日手会誌38巻6号. 993-996, 2022.」が出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに得られたPIP関節の完全伸展が不可能な、重度の屈筋腱腱鞘炎の臨床的評価の結果と組織学的評価結果は、2021年4月に開催された日本手外科学会で「弾発指に対する浅指屈筋腱尺側半腱切除術施行例の臨床成績と組織所見」、「PIP関節屈曲拘縮を伴う弾発指における浅指屈筋腱の肉眼所見の検討」として、2021年5月に開催された日本整形外科学会学術総会で「USSRを施行した弾発指の肉眼的および画像学的検討」として、2021年9月に開催されたアメリカ手外科学会で「Clinicopathologic findings of the trigger finger undergoing ulnar superficialis slip resection」、「Clinical appearance of trigger finger with PIP joint flexion contracture 」として(いずれもWeb)報告した。 研究実績の概要に記載した通り、論文としては「市川裕一、西田淳、畠中孝則、永井太朗、松林純、山本謙吾. 弾発指に対する浅指屈筋腱尺側半腱切除施行例の臨床成績と組織所見. 日手会誌38巻6号. 993-996, 2022.」が出版された。
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今後の研究の推進方策 |
A1腱鞘と浅指屈筋尺側半腱との間の腱・腱鞘間滑走抵抗の評価が進んできたため、これまでに得られた重症の屈筋腱腱鞘炎例の臨床的、画像的、組織学的評価結果に、この所見を追加して、重度の屈筋腱腱鞘炎の病態を解明していく考えである。成果は海外の学会で発表し、英文雑誌に投稿する予定である。その一つとして2023年6月にシンガポールで開催予定のアジアパシフィック手外科学会にて成果を報告することになっている。また、現在臨床所見の評価結果は、海外の学術雑誌に投稿中である。これらにより我々が考案した重症の屈筋腱腱鞘炎に対する浅指屈筋腱尺側半腱切除術の効果を基礎的に裏付けし、これまで治療成績不良であった患者さんの成績改善に寄与したいと考えている。 なお、今般のコロナウイルス感染症のパンデミックによる種々の制限により、滑膜細胞の培養実験は実施出来なかったのが現状である。令和5年度には状況をみながら滑膜細胞の培養実験も実施したいと考えているが、最終年となってしまい最終的に培養実験が実施できなかった場合、以降いかにして実現できるかを検討し、今後の実施を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度には、犬を用いた滑膜細胞培養の実験はCOVID-19流行により、研究者の往来が制限され、実施に至らなかった。このため犬の飼料や細胞培養に関する費用、病理組織学的、電顕的検索に関する支出がなく、研究費の支出が予算額より少なくなった。これにより次年度使用額が生じた。 令和5年度には腱・腱鞘間滑走抵抗の評価を解析して論文作成の予定であるが、もし培養細胞の運搬等が日常的に問題なく可能な状態になれば、今後研究環境を整えていき、実施したいと考えている。
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