研究課題
本研究では、遺伝子組換えカイコより精製した線維芽細胞増殖因子2(Fibroblast growth factor2, 以下FGF2)誘引フィブロインを利用し、より層の厚い移植用ヒト滑膜細胞シートを作製することを目的としている。令和2, 3年度は、ヒト手術検体より採取し分離した滑膜細胞またはヒト骨髄由間葉系幹細胞(不死化細胞株UE6E7-16)をFGF2誘引フィブロインスポンジ上に播種して細胞シートを作製し、細胞増殖能、組織像についてWild-typeフィブロインと比較検討した。細胞数、WST-1 assay、DNA量ともにFGF2誘引フィブロイン群で有意に高値を示し、細胞増殖効果が確認された。一方で、軟骨分化に関しては、組織学的にはやや抑制される傾向が認められた。そこで、令和4年度は、更に長期培養後の軟骨分化の状態を解析することを目的とした。フィブロインスポンジ上にUE6E7-16細胞を播種して12時間静置後に、10 %FBSおよび0.2 mM Asc2-P を添加した DMEM/F12 培地にて培養し、培養開始後1週目から200 ng/mlのrhBMP2を添加した軟骨分化誘導培地に変更してさらに4週間の培養を行った。組織学的検討として、HE、アルシャンブルーによる染色と抗S100蛋白抗体、抗SOX9抗体を用いた免疫染色により、軟骨分化の評価を行った。FGF2誘引フィブロイン群では、細胞数が増加し厚い細胞層が得られたが、アルシャンブルーでの染色性がやや低下し、抗S100蛋白抗体、抗SOX9抗体による免疫染色での陽性細胞数が低下する傾向が認められた。FGF2誘引フィブロインにより培養液中から誘導されたFGF2により、軟骨シート内の細胞層の厚みは増加したものの、形成後の軟骨分化についてはやや抑制的に作用することが明らかとなった。
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Sci Rep
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Cartilage
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