研究課題/領域番号 |
20K09443
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
赤木 將男 近畿大学, 医学部, 教授 (00273441)
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研究分担者 |
橋本 和彦 近畿大学, 医学部, 講師 (10635569)
墳本 一郎 近畿大学, 医学部, 講師 (20770051)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 早期変形性膝関節症 / 軟骨下骨 / 骨粗鬆化 / 骨細胞 / 破骨細胞 / RANKL / DMM手術 / つくば高血圧マウス |
研究実績の概要 |
【目的】加齢と局所レニン・アンギオテンシン(RAS)系は骨代謝に影響を与えることが知られている。我々は、内側半月板不安定化 (DMM)マウス膝OAモデルを用いて、早期OAの軟骨下骨代謝異常と変形、骨芽細胞におけるRANKL発現、破骨細胞活性化の関連を検討した。加齢に関しては40週齢マウスを、RAS活性化モデルとしてはつくば高血圧マウス(THM)を使用した。 【方法】オスTHMとC57/BL6マウス(WT)に対して全身麻酔下にDMM手術を施行し、1・2・4・8週後に屠殺し、関節軟骨変性についてはOARSI scoreで評価した。また、軟骨下骨組織の骨細胞数とRANKL発現骨細胞数をDMP-1とRANKLの二重免疫染色により、破骨細胞数をTRAP染色により検討した。軟骨下骨の骨粗鬆化についてはμCTによりBV/TVを測定した。さらに、μCTのMPR前額断を用いて同一個体軟骨下骨の経時的形態変化を観察した。 【結果】DMM術後2週間のWT軟骨下骨において、TRAP陽性破骨細胞数はDMM側で有意な増加を認めた。RANKL発現骨細胞数もDMM側で有意な増加を認めた。一方、骨細胞数はDMM側とSham側において差は認められなかった。μCT による観察では、THMにおいて術後1週から軟骨下骨のBV/TVが有意に低下し、術後4W以降では、WTでも軟骨下骨のBV/TVは有意に低下した。BV/TVとOARSIスコアの間には負の相関を認め、スコアの増加に先んじてBV/TVが低下した。さらに、DMMを行った脛骨内側プラトーの軟骨下骨厚は同一個体において経時的に減少(圧縮変形)を認め、その減少はTHMにおいて有意であった。 【考察】軟骨下骨への異常なメカニカルストレスとRAS系の亢進に伴う骨粗鬆化は軟骨下骨の圧縮変形と骨代謝亢進を生じ、変形性関節症の発症と進行に関与する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
μCT による観察で、DMM手術後に強いメカニカルストレスが加わる内側脛骨プラトーの軟骨下骨に一過性の骨量低下と軟骨下骨厚さに経時的な減少が認められた。軟骨下骨の圧縮変形は骨量の低下と強いメカニカルストレスによる結果と考えられ、軟骨下骨では骨梁のマイクロフラクチャーとそれに伴うリモデリングが生じているものと推定される。このような変化は軟骨・軟骨下骨間チャンネルを介したサイトカインの軟骨組織への侵入を許し、軟骨変性を促進するものと思われる。 免疫染色による検討で、同部にRANKL発現骨細胞数とTRAP陽性破骨細胞数の有意な増加を認めた。一方、骨細胞数はDMM側とSham側において差は認められなかった。この結果は、軟骨下骨の骨粗鬆化、圧縮変形、骨リモデリングを病理学的に支持する所見である。 OARSIスコアにて評価される軟骨変性の進行よりやや早期に軟骨下骨の変化が生じることが示された。この結果も、早期OAの軟骨下骨代謝異常と骨粗鬆化を予防・治療することにより、OAの進行を抑止できるのではないかとする我々の仮説を支持する。
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今後の研究の推進方策 |
予定通りDMM手術によるマウス膝OAモデルを用いて研究を進める。WTにおいては軟骨下骨における骨細胞数には変化がなかった。すなわち、本膝OAモデルにおける軟骨下骨骨代謝異常の原因は、骨細胞アポトーシスによるものではなく、骨細胞によるRANKL発現の亢進による可能性が高い。この点についてはTHMを用いてさらに検討を進める。 また、WTのDMMにおいて骨細胞のRANKL発現の亢進が認められたが、骨細胞におけるSclerostin発現についても検討する。WTにおいてはDMMによる軟骨下骨厚の減少がわずかであったが、例数を増やして検討する。THMにおいても、軟骨下骨の免疫組織学的な検討を進め、早期OAにおける軟骨下骨の代謝異常・骨粗鬆化と圧縮変形の関連性について明らかにしてゆく。
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