研究課題/領域番号 |
20K09444
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
麸谷 博之 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (30248140)
|
研究分担者 |
山根木 康嗣 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00434944)
西浦 弘志 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (90284760)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 骨肉腫 / 転移 / 血管新生抑制 / 血行性転移抑制 / エピジェネティック試薬 |
研究実績の概要 |
骨肉腫の最大の予後不良因子である肺転移を抑制するには、腫瘍新生血管形成を抑制することが重要である。本研究は、エピジェネティック試薬であるヒストン脱アセチル化阻害剤(バルプロン酸)とラパマイシン標的蛋白質阻害剤(ラパマイシン)を用いて、Semaphorin/Neuropilin/Plexinを介する血管新生抑制機構を亢進することで、骨肉腫の増殖と肺転移の抑制を目的としている。ヒト骨肉腫細胞株にバルプロ酸とラパマイシンを作用させることで、以下のことが証明できた。 1.血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)の受容体であるSemaphorin 3A (SEMA3A)とそのレセプターであるNeuropilin 1 (NRP1) およびPlexin A1の遺伝子発現が増加することを確認した。 2. NRP1はVEGFR2と共受容体を形成し血管内皮細胞増殖因子(VEGF)-Aと結合し、血管新生を促進する。VEGF-AとVEGFR2の発現は有意に減少していた。 3.可溶性SEMA3A蛋白は増加し、ヒト骨肉腫細胞株細胞膜NRP1蛋白および可溶性NRP1蛋白(sNRP1)の増加も確認できた 4. 可溶性VEGF-Aは有意に減少した。 これらの結果から、バルプロ酸とラパマイシンによって骨肉腫の血管新生抑制に抗腫瘍効果が期待できると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響による実験資材の生産および物流の停滞・遅延が問題となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
1. ヒト血管内皮細胞株を用いてSEMA3A, NRP1, PlexinA1のmRNAおよびタンパク発現に及ぼす影響をin vitroで検討する。 2. 腫瘍(由来)産生SEMA3Aがヒト血管内皮細胞の増殖に及ぼす影響について検討する。 OSの培養上清をヒト血管内皮細胞株と共培養し、その増殖能をMMT法およびtube formation (管腔形成) にて測定、評価する。 3. VPAおよびmTOR阻害剤単独もしくは併用がSEMA3A, NRP1, PlexinA1を介する血管新生および肺転移におよぼす効果をin vivoで検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)1. 細胞株は研究分担者が既に購入済みであった。2. 試薬等はこれまでに購入していた物を使用もしくは代用可能であった。3.実験手法も熟練し、無駄なく実験結果が得られた。4. 新型コロナウイルス感染の影響で学会が中止またはWEB開催となったため、現地参加の必要がなくなった。
(使用計画)血管内皮細胞を用いた実験を行うための購入費用に使用する予定である。新規の内因性血管抑制因子を発見し、詳細なデータの取集に、試薬、コンピューター、ソフトを新規い購入する必要がある。
|