研究課題
本研究の目的は、骨の増加と減少・筋の肥大と萎縮のバランスを生体と分子レベルで解明することである。令和3年度は、加齢に伴って筋肉量が大きく減少するDMD(Duchenne Muscular Dystrophy)モデル(CRISPR/Casシステムでdystrophinタンパクを欠損させた)ラットを用いて、加齢に伴う骨の変化を、海綿骨と皮質骨に分けて評価した。野生型ラット(WT群)とDMDモデルラット(DMD群)について、15週齢を各6匹、30週齢を各4匹用いて、DXAで大腿骨の骨密度を測定し、micro-CTで大腿骨骨幹部の皮質骨と腿骨骨幹端部の海綿骨を解析した。15週齢では、DMD群の大腿骨長はWT群と比べて有意に短かったが、30週齢では、両郡間で差がなかった。15週齢では、DMD群の大腿骨周囲長(外周も内周も)はWT群と比べて有意に短かったが、30週齢では、両郡間で差がなかった。15週齢と30週齢ともに、DMD群の大腿骨骨密度はWT群と比べて有意に低下していた。Micro-CTの結果、海綿骨量(BV/TV)と骨梁数(Tb.N/BS)は15週齢では、WT群とDMD群に差はなかったが、30週齢では、DMD群が有意に低値であった。15週齢では、海綿骨の連結密度(Conn.D)とSMI(structure model index)に差はなかったが、30週齢では、両群に有意差があった。しかし、皮質骨幅と皮質骨面積は、15週齢も30週齢でも、WT群とDMD群に差はなかった。結論として、加齢により筋肉量が大きく減少するDMDモデルラットにおいて、大腿骨骨幹部の皮質骨には変化はないが、大腿骨骨幹端部の海綿骨量は微細構造の劣化を伴って有意に減少することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
加齢とともに筋肉量が大きく減少するDMD(Duchenne Muscular Dystrophy)モデルラットを用いて、大腿骨を皮質骨と海綿骨に分けて解析した。大腿骨骨幹部の皮質骨には変化はないが、大腿骨骨幹端部の海綿骨量は微細構造の劣化を伴って有意に減少する事実を明らかにした。当初の計画と照らし合わせて、おおむね順調に伸展していると判断できる。
今後も引き続き、骨と筋をともに制御する機序に着目して研究を進めるとともに、骨・筋のアナボリック作用が減弱したモデル動物(遺伝子改変マウスや病態モデルマウスなど)における骨-筋相互連関を明らかにする方策である。これらの研究から、骨と筋の双方を制御する分子メカニズムを探索する方策である。
コロナ渦のため試薬等の納入が遅く計画どおりに進まず、予定していた出張も中止となったため繰越となった。次年度は試薬購入、出張旅費、論文作成のための英文校正費等に使用したい。
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