研究課題
膝関節の変形性関節症(膝OA)では時に痛みが急激に増悪するフレアと呼ばれる状態が経験される。フレアの症例では痛みだけでなく、同時に軟骨基質の急速な変性消失も生じることがある。フレアに伴うOAの急速な進行機序を探るために、本研究ではとくに滑膜性フレアの症例について、関節液の解析を中心に研究を行った。先行研究において滑膜性フレアの症例ではフレアの時期に関節液中でMMP-1、2、3およびuPA、PIC、D-dimerの濃度が上昇すること、このうちuPAの濃度の上昇はおそらく滑膜においてuPAの発現が亢進するためであることが示されたが、滑膜においてuPAの発現が亢進する機序は不明であった。本研究では3年の研究期間に、滑膜におけるuPAの発現亢進がOA軟骨から遊離する活性型のTGF-βによるものである可能性を明らかにした。また関節液中のMMP-1, 2, 3の酵素活性を調べ、このうちMMP-1の酵素活性がフレアの時期に亢進していることを明らかにした。この結果から滑膜性フレアに伴うOAの急速な進行がMMP-1の活性亢進によるものである可能性が考えられた。つぎにMMP-1の活性化の機序を知る目的で関節液にuPAを加えてincubateする実験を行ったところ、PICの濃度は明らかに上昇したがMMP-1の活性には有意の変化は生じなかった。一方、OA滑膜からのタンパク抽出液の解析ではPICの濃度とMMP-1の活性の間に有意の正の相関が認められ、その結果から滑膜性フレアの症例ではフレアの時期に滑膜組織においておそらくuPAの作用によってプラスミン活性が亢進し、その作用によりMMP-1が活性化されて関節液中に遊離するものと考えられた。ただ現時点ではフレアの時期になぜMMP-1の活性だけが上昇し、他のMMPの活性の上昇が見られなかったのかは不明で、その理由の解明は今後の課題と考えられた。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
Geriatrics and Gerontology International
巻: 23 ページ: 297-303
10.1111/ggi.14561.
Medicina (Kaunas, Lithuania)
巻: 59 ページ: 363
10.3390/medicina59020363.
Scientific Reports
巻: 12 ページ: 9916
10.1038/s41598-022-14116-x.
BMC Musculoskeletal Disorders
巻: 23 ページ: 811
10.1186/s12891-022-05762-3.
Spine Surgery and Related Research
巻: 6 ページ: 681-688
10.22603/ssrr.2021-0231.
巻: 23 ページ: 1065
10.1186/s12891-022-05954-x.