研究課題
目的:慢性腎臓病(CKD)患者は筋力や骨強度が低下することで、転倒や骨折のリスクが増加するが、進行期CKD患者において骨粗鬆症や筋力低下に対する治療のエビデンスは十分ではない。本研究ではアデ ニン誘導性CKDモデルラットを作製し骨と筋肉にどのような変化が生じるかを検討した。方法:8週齢のWistar系雄ラットにアデニン飼料を4週間投与し、CKDモデルラット(CKD群)を作製した。普通飼料で飼育したControl群とともに12、16、20週齢で下記の項目を評価した。DXA法により全身・大腿骨・腰椎の骨密度を測定した。大腿骨骨幹部3点曲げ試験と大腿骨遠位顆部圧縮試験を行い骨強度を測定した。前脛骨筋とヒラメ筋の筋湿重量を測定し,体重に占める割合を求めた。血清学的評価として血清尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cre)、リン(P)、カルシウム (Ca)を測定した。腎組織切片を作成し、HE染色とエラスチカマッソン染色を行った。結果:CKD群では、全身、腰椎、大腿骨の骨密度はControl群に比べ有意に低下していた(P<0.05)。CKD群の20週齢で、大腿骨 骨幹部3点曲げ試験と大腿骨遠位顆部圧縮試験のにおいて破断エネルギーと最大荷重はControl群に比べ有意に低下していた (P<0.05)。体重に占めるた前脛骨筋とヒラメ筋の筋湿重量は、CKD群とControl群で有意差を認めなかった。CKD群の血 清BUN、Cre、Pは20週齢でControl群に比べ有意に高値であったが(P<0.05)、Caは有意差を認めなかった。CKD群の腎組 織切片では、拡張した尿細管内へのアデニンの結晶沈着を認め、尿細管壊死と著名な間質線維化が観察された。考察・結論:本モデルラットは血清学的にCKD stage4に相当する腎障害を呈し、骨密度と骨強度が低下していたが、筋湿重量は変化しなかった。
2: おおむね順調に進展している
実験及びデータ収集,解析をすることができ,概ね順調に研究が進展している.
実験及びデータ解析を終えており,論文執筆を進める予定である.
主として,旅費が発生しないこと,実験に際して人件費や謝金が発生しなかったことから,次年度使用額が生じました.新型コロナウイルス感染の蔓延が収まれば,今後学会発表等や,人件費を要する業務を行うことが可能となり,これらの予算を使用することができる予定です.
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