(背景)後縦靭帯骨化症(OPLL)は遺伝子や環境因子など多因子を背景として発症する疾患である。我々はOPLL発症にvitamin K不足を背景とした人体組織の石灰化・骨化機構の亢進が関与しているとの仮説の元に動物実験を行った。 (方法)Vitamin K依存性の骨化抑制機構としてgla-rich protein(GRP)に着目し、OPLLの動物モデルはtwyマウスを用いた。生後5週twyマウス30匹を以下の3群に分け、6週間の介入を行った。1.コントロール群:vitamin Kを通常餌より摂取。2.Vitamin K補充群:通常餌に加えてvitamin K2(menaquinone-4; 50 mg/kg)を週2回腹腔内注射、3.Vitamin K欠乏群:コバルト照射したvitamin K欠乏餌を投与。生後11週のエンドポイントにおいて、歩行機能をfootprint analysisで評価と採血を行った。また安楽死させた動物で骨化の形態評価および組織学的分析を行った。 (結果)マイクロCTによって頚椎石灰化領域の体積を比較すると、Vitamin K補充群では他の2群に比較して有意に石灰化体積が小さかった。Footprint analysisでもvitamin K補充群の歩幅は前肢、後肢とも他の2群よりも有意に大きかった。血漿中のGRP濃度はvitamin K補充がビタミンK欠乏群よりも有意に高値であった。GRPに対する免疫染色では、異所性石灰化の周囲の軟骨細胞にGRPが強く発現することが確認され、Vitamin K欠乏群ではGRPの発現が弱い傾向があった。 (結論)OPLLの動物モデルにおいてvitamin K補充療法が頚椎の異所性石灰化を有意に減少させることが確認できた。Vitamin K不足にあるOPLL患者では、その補充が骨化の進行防止に有用である可能性がある。
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