研究課題
本研究ではOA軟骨変性部においてプラスミン活性が亢進していることを確認したうえでその機序を探った。研究期間の1年目である2020年度にはOA軟骨変性部では非変性部に比してuPA以外にPAI-1の発現が亢進していること、またuPAと同様にプラスミン活性の発現に関与するtissue-type plasminogen activator (tPA)の発現も亢進していることを見出し、さらにOA軟骨変性部におけるプラスミン活性の亢進は主にtPAの作用によると考えられる結果を得た。研究2年目の2021年度にはOA軟骨からのタンパク抽出液(以下、OA軟骨抽出液)を用いた検討により、OA軟骨から遊離したタンパクの中に軟骨細胞に対してuPA、PAI-1、NGFの発現をすべて亢進させる因子が存在することを見出し、さらにその因子が活性型のTGF-βと思われることを明らかにした。ただtPAの発現はTGF-βによる制御を受けないこともわかったため、2022年度にはOA軟骨変性部においてtPAの発現が誘導される機序の探索を進めた。血管内皮細胞においては機械的なストレスに応じてtPAの発現が上昇することが知られている。このためはじめに一次培養ヒト関節軟骨細胞を三次元培養で維持してこれに力学試験機により荷重を繰り返し加える実験を行ったが、この実験では力学的ストレスによりtPAの発現が亢進するという結果は得られなかった。ついでOA軟骨の変性部では軟骨細胞周囲のマトリクスが変化していることから、マトリクス環境の違いがtPAの発現を誘導している可能性について検討した。この結果、関節軟骨細胞においてtPAの発現はインテグリンを介する制御を受けており、OA軟骨変性部におけるtPAの発現亢進も細胞外マトリクスの変化によるものである可能性が示された。
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