試作品を用いて各種力学解析を行った。 ・静的荷重試験:金属製寛骨臼モデルへ試作品と従来品を取付け、2300 Nの荷重をφ40mmの球型圧子で負荷し発生する歪量を測定した。従来品では、インプラントにかかる最大応力は630MPaであり、インプラントの引っ張り応力を超えていたが、プロトタイプの試作品では最大応力は330MPaであり、強度的に余裕があった。 ・疲労試験:インプラントのドーム部に2300~4600Nの繰り返し負荷を5Hzで、開発品と従来品とに加え、破断が起きるかを確認した。短期間の大荷重(4600N)の場合、従来品は耐えられず破損に至るが、開発品のプロトタイプは破損に耐えることができた。一方、長期間の荷重(2300N・3450N)を加えた場合では、従来品のほうが疲労強度が高かった。要因として、従来品はポリッシュ加工してあるが、プロトタイプの開発品はrough surfaceなままであるため、その表面加工の違いが影響したと考えられた。 ・模擬骨を用いた力学試験:骨盤模擬骨に従来品及びプロトタイプインプラントを組み合わせたものを装着し、荷重ストレスに相当する2300Nの負荷を加えてインプラントとその周囲骨に及ぼす応力状態を計測した。作成した検体に荷重を負荷し、ひずみゲージにより骨盤モデルおよびインプラントのひずみを測定したところ、インプラントにかかる最大応力と最大ひずみは既存製品よりもプロトタイプの開発品で低く、力学的に安定し破綻しにくいこと(従来品;最大応力:66.7MPa、最大ひずみ:212.441 με、開発品;最大応力:23.4MPa、最大ひずみ317.704 με)が判明し、また、各模擬骨の寬骨臼周囲および臼底部におけるひずみを計測すると、骨盤側に発生する応力は既存製品と開発品とで差がないことが判明した。
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