研究実績の概要 |
椎間板変性は腰痛の主な原因の一つである.アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの一つであり,抗炎症作用を有すると報告されている.アディポネクチンの臨床応用を目指し、まず始めにアディポネクチン受容体アゴニストであるアディポロン投与がヒト椎間板細胞に与える影響を検討した.脊椎手術を施行された10~70歳代16例のヒト椎間板細胞を培養してアディポロンの細胞毒性を検討した.次にヒト椎間板細胞を三次元培地TASCL(Tapered Soft Stencil for Cluster Culture)に培養,細胞塊を形成した後に4グループ(Control群:C群、アディポロン投与群:A群、IL-1β投与群:I群、アディポロン+IL-1β投与群:A+I群)に分けた.その細胞を回収しRT-PCR,蛍光免疫染色,Western Blotting法を用いて細胞外基質同化・異化因子,炎症性サイトカインの発現について比較した. 細胞毒性試験では5μM以上の濃度で有意に細胞毒性をもつことが示された(p<0.001).RT-PCR法ではTNF-α(p=0.003),IL-6(p=0.004),MMP-13(p<0.001),ADAMTS-4(p=0.001)についてI群とA+I群間で有意に発現低下を認めた.細胞外基質同化因子はI群とA+I群間に有意差は認めなかった.同様の結果を蛍光免疫染色,Western Blotting法でも認めた. 以上よりIL-1β刺激下でのアディポロン処理は,ヒト椎間板細胞における炎症性サイトカインの発現を有意に低下させることが示された.さらに,アグリカン分解や椎間板変性の原因となるADAMTS-4,MMP-13の発現が有意に低下することも示された.以上の結果から,アディポロン投与は椎間板変性進行の防止や予防に有用な可能性が示唆された.
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