研究実績の概要 |
本研究目的は、Sox9とScxが協調的に誘導する標的遺伝子を同定し、in vitroとin vivoでその機能、すなわちenthesis再生における役割を解析する事である。腱板修復にはenthesis再生が不可欠である事、enthesis形成にはSox9+/Scx+ statusの細胞が重要である事に立脚し、Sox9とScxが協調的に誘導する未知のenthesisマスター因子と呼ぶべき特異的遺伝子を同定し、これを治療分子標的として機能評価する事である。その観点に立ち、まずSox9とScxを同時に誘導できる因子の検索を行った。マウス間葉系幹細胞(MSC)、ATDC5細胞、そしてC3H/10T1/2細胞など、軟骨細胞腱細胞両分化ポテンシャルを持つ細胞を用いた。Enthesis再生にTGF-βとBMP(共にTGF-βファミリー分子群)の必要性が報告されているので、商品ベースで購入可能な各種TGF-βファミリー・リガンド(TGF-β1, TGF-β2, TGF-β3, myostatin, activin A, BMP-2, BMP-3, BMP-6, BMP-9, BMP-10, BMP-14, GDF-3, GDF-6, GDF-7, GDF-9, GDF-15, nodal, inhibin A, Lefty A)をそれぞれ添加して、より強力な誘導因子を検索した。その結果、TGF-β1, TGF-β2, myostatin, activin AにSox9/Scx double positive状態を誘導する能力があることが分かった。 一方、Sox9とScxの共通標的遺伝子を検索するためのツールとして、両者の発現ベクター、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)の作製に着手し、進行中である。
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