研究課題
我々は脊髄損傷患者に対する自己骨髄幹細胞(MSC)の静脈的投与を行った医師主導治験において、脳のMRI diffusion tensor imaging (DTI)を用いたコネクトーム解析を行い、脳のplasticityが亢進していることを見出した。さらに、最近では、脊髄損傷ラットモデルにMSC移植を行い、運動機能の回復が現れた移植3日目に大脳皮質運動野の網羅的遺伝子解析を行った結果、複数の遺伝子の発現量に変化があり、これらの遺伝子の多くは神経再生、plasticityの亢進に関与する遺伝子であることを報告した(Oshigiri et al.,2019)。そこで本申請では、先行研究を発展させ、大脳皮質の更なる解析に加えて脊髄損傷局所の網羅的遺伝子解析を複数の観察ポイントで行い、運動機能の改善に関与する遺伝子のプロファイルを解析し、中枢神経系全体の遺伝子発現の変化を総合的に考察することで、次世代の治療法に展開させることを目的とする。現在までに、本研究費によって、ラット脊髄圧座モデルを作成し、MSCを左大腿静脈より投与し、下肢運動機能の行動解析をBBBscore行い、投与群の優位性を認めた。移植後3日目および7日目の大脳皮質運動野のMicroarrayによる網羅的遺伝子解析を行っている。これまでのところ、移植後7日目と比較して、3日目の大脳皮質の遺伝子が大きく変化しており、運動機能回復に関連した遺伝子がいくつか判明され、その経時的な変化の解析を行っているところである。また、脊髄及び脳の組織から得られた複数タイムポイントの遺伝子情報を元に、複数のデータベース(Gene Ontology解析、パスウェイ解析、エンリッチ解析、タンパク質相互作用解析、プロモーター解析)を用いて、統合的に遺伝子発現解析を行う。以上のように、補助金は補助条件に従って、有効に使用されている。