研究課題/領域番号 |
20K09490
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
隅山 香織 東海大学, 医学部, 准教授 (20433914)
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研究分担者 |
酒井 大輔 東海大学, 医学部, 准教授 (10408007)
平山 令明 東海大学, 先進生命科学研究所, 教授 (70238393)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | IL-17 / インシリコ創薬 / 椎間板変性 |
研究実績の概要 |
今年度はIL-17 familyの椎間板髄核細胞(NP細胞)に対する作用のさらなる解析、及びIL-17A阻害剤化合物の一つであり、これまでラットNP細胞で評価を行ってきたZ92151850 (Z9215)のヒトNP細胞に対する作用の評価を中心に研究を実施した。 IL-17受容体においてIL-17Aが結合するIL-17RAはIL-17RCと二量体を形成し、IL-17RCにはIL-17 familyであるIL-17Fが結合する。IL-17Aの受容体に対する選択的結合性を確認するため、ラットNP細胞にIL-17AあるいはIL-17Fを50ng/ml投与し、生体内における椎間板の環境と近似した1%の低酸素条件で培養しリアルタイムPCR法にて評価した。その結果、これまでIL-17Aの刺激によって発現が有意に増加することを報告してきたIL-6、COX-2、MMPs、STAT3のmRNAは、IL-17Fの投与下では有意な変化を認めなかった。以上より、IL-17受容体構造の中におけるIL-17Aとその結合部は、椎間板変性治療の標的として妥当であることが確認された。 ヒトNP細胞にIL-17A阻害剤候補化合物Z92151850 (Z9215)を50μg/ml、IL-17Aを50ng/ml投与し、生体内における椎間板の環境と近似した1%の低酸素条件で培養し、リアルタイムPCR法で椎間板変性や細胞保護に関与が報告されている因子の発現を評価した。椎間板変性の促進や炎症への関与が報告されている中心的な因子の中では、MMP-13とVEGF-A がZ9215の投与により発現の有意な低下を示した。以上の結果から化合物Z9215はヒトNP細胞においてもIL-17A阻害作用を有する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト椎間板の初代培養細胞の増殖は、ラットの細胞と比較して長い時間を要し、またやや不安定である傾向が見られたため評価に至るまで長期間かかった。さらに、今年度初頭にはCOVID-19感染拡大による国際間の物資の流通の大々的な遅延が生じたため、化合物や評価に必要な物品の入手にも昨年度と比較して長い時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのラットNP細胞を用いた評価と今年度の研究結果を比較すると、同じIL-17A及び化合物の投与条件下にあってもサンプルごとに測定される数値のばらつきの差も拡大する傾向が見られた。ヒトの初代培養NP細胞のサイトカインや化合物に対する感受性の格差が大きい可能性が考えられ、IL-17A阻害剤候補化合物の評価には、より多くのサンプルを用いて多様な実験条件・実験系での多角的な解析が必要である事が示唆された。 今後はヒト初代培養細胞を用いて他のIL-17A阻害剤候補化合物の評価を行い、さらにIL-17 familyの様々な細胞、疾患に対する作用についても平行して評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞を培養し増殖させて評価を実施出来る段階に至るまで予想より長い期間を要したこと、さらに今年度初期にあCOVID-19の感染拡大による国際流通の遅延により必要物品の入手に長時間を要したこと、以上の点から試薬や消耗品の購入が予定より少なくなった。繰り越した研究費は次年度の試薬、実験用消耗品、等の購入に使用する予定である。
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