研究課題
軟部組織外傷の急性期処置においてアイシングは腫脹および疼痛軽減において重要とされながら、アイシングは末梢血管を収縮させ局所低酸素環境を惹起し筋再生を結果的に阻害するとの報告が散見される。一方で、温熱療法による筋再生効果が報告されている。本研究ではラット骨格筋圧挫傷モデルを用い、アイシング・温熱療法が損傷骨格筋の再生過程への影響を検討した。10週齢雄性Wistar Rat にて圧挫損傷を作成し、対照群(NT群)、アイシング群(Ice群)、温熱療法群(Hot群)を作成した。アイシングは氷嚢を用いて0℃-20分、温熱療法はホットパックを用いて42℃-20分を損傷直後に施行した。各治療中の皮下温度、損傷30時間後までの損傷筋内酸素濃度、損傷5・7日後の再生筋線維数を測定した。皮下温度:損傷肢は29.7±2.4℃。Ice群は経時的に低下し、20分で13.1±2.1℃まで低下した。Hot群は開始後から37.8±0.5℃となり温度変化は認めなかった。酸素濃度:損傷30分で対照群(13.8±2.3mmHg)に対し、Ice群(4.7±2.5mmHg)で有意に低下し、Hot群(59.4±17.4mmHg)で有意に上昇した。損傷3時間以降は対照群とIce群では有意差は認めなかった。Hot群は損傷24時間後まで対照群・Ice群より有意に増加していたが、損傷30時間後には3群の有意差はなくなった。再生筋線維数:損傷5日後でHot群が対照群・Ice群と比して有意に増加したが、損傷7日後でHot群が対照群・Ice群と比して有意に低下した。骨格筋挫傷ラットモデルにおいて急性期にアイシング+HBOを施行し、骨格筋内低酸素環境を改善することで、腫脹軽減と骨格筋再生を達成することが可能と考えられる。温熱療法は損傷筋内酸素濃度の低下を抑制し、筋再生を促進したと考えられた。