研究課題/領域番号 |
20K09497
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
鈴木 賀代 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (20456388)
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研究分担者 |
金森 昌彦 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (20204547)
安田 剛敏 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (20377302)
渡邉 健太 富山大学, 附属病院, 診療助手 (90865255)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 軟部肉腫 / 血中腫瘍循環細胞 / リキッドバイオプシー |
研究実績の概要 |
軟部肉腫患者の生命予後の改善には、遠隔転移の制御が不可欠である。近年、癌の再発や転移の早期診断にリキッドバイオプシーが用いられているが、肉腫におけるリキッドバイオプシーはまだ確立されていない。本研究の目的は、軟部肉腫の肺転移形成における血中腫瘍循環細胞 (CTC)の同定と体内動態を評価することである。我々が樹立したマウス自然発生の未分化多形肉腫細胞株 (RCT)をC3H/Heマウスの大腿部筋肉内に同種同所移植し、未分化多形肉腫マウスを作製した。移植後2, 3, 4週で、原発巣の体積と肺転移数を測定した。毛細管現象を利用するサイズベースのCTC分離キット (MetaCell)にて、末梢および心臓採血で得た全血液からCTCを分離回収し、CTC数を経時的に評価した。 原発巣の体積は、移植後2週: 1.27 cm3、3週: 2.61 cm3、4週: 6.59 cm3と経時的に増加し、4週で有意に増加した。肺転移は、移植後2週および3週では肉眼的結節は認めず、4週では平均10.5個の結節を認めた。顕微鏡下では、3週で直径500 mm以下の微小転移を平均 5.5個/slide認めた。回収したCTCを4日間培養し、直径20 mm以上の細胞を計測したところ、移植後2週: 36細胞、3週: 46細胞、4週: 121細胞と経時的に増加し、4週で有意に増加した。CTC数と原発巣サイズに相関を認めたが、肉眼的肺転移数との間に相関は認めなかった。 マウス軟部肉腫の肺転移モデルにおいて、CTCは、原発巣が肉眼的腫瘤を形成する2週から存在し、原発巣の増大とともに増加した。さらに、微小転移形成以前から出現するという体内動態を明らかにした。CTCの回収が確立できれば、微小転移の出現予測に有用と考える。一方、CTC数と肺転移数に直接的な関連は認めず、遠隔転移の進行はCTCの存在のみでは規定されないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R3年度にCTCの回収を実現でき、R4年度で転移能に影響する遺伝子解析を行うことで、リキッドバオプシーによる軟部肉腫の早期転移の診断に有用な遺伝子を同定が可能な見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
HM-RCTとLM-RCTの肺転移数の違いは明らかであり、CTCを採取した血液から回収し保存してある、血清を用いて、次世代シークエンス (Next-generation sequencing, NGS)により、HM-RCTとLM-RCTで増加または現象した遺伝子変異を網羅的に検出することを検討中である。さらに、CTCを回収・培養後のコロニー形成状態に違いを認めたため、HM-RCTとLM-RCT細胞間接着に影響を及ぼす遺伝子に標的を絞り、発現の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子解析まで実施する予定でいたが、R3年度は実施できず、遺伝子解析に係る支出がなかったため残額が生じた。R4年度は遺伝子解析に使用する計画である。
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