研究実績の概要 |
軟部肉腫患者の生命予後の改善には、遠隔転移の制御が不可欠である。近年、癌の再発や転移の早期診断にリキッドバイオプシーが用いられているが、肉腫におけるリキッドバイオプシーはまだ確立されていない。本研究の目的は、軟部肉腫の肺転移形成における血中腫瘍循環細胞 (CTC)の同定と体内動態を評価することである。 我々が樹立したマウス自然発生の未分化多形肉腫細胞株 (RCT)をC3H/Heマウスの大腿部筋肉内に同種同所移植し、未分化多形肉腫マウスを作製した。移植後2, 3, 4週で、原発巣の体積と肺転移数を測定した。毛細管現象を利用するサイズベースのCTC分離キットにて、末梢および心臓採血で得た全血液からCTCを分離回収し、CTC数を経時的に評価した。 原発巣の体積は、経時的に増加し、4週で有意に増加した。肺転移は、移植後3週で顕微鏡下に微笑転移を認め、4週では平均10.5個の肉眼的肺転移を認めた。回収したCTCを4日間培養し、細胞数を計測したところ、移植後2週から、CTCを捕獲可能であった。CTC数は経時的に増加した。CTC数と原発巣サイズに相関を認めたが、肉眼的肺転移数との間に相関は認めなかった。マウス軟部肉腫の肺転移モデルにおいて、CTCは、原発巣が肉眼的腫瘤を形成する2週から存在し、原発巣の増大とともに増加した。さらに、微小転移形成以前から出現するという体内動態を明らかにした。CTCの回収が確立できれば、微小転移の出現予測に有用と考える。一方、CTC数と肺転移数に直接的な関連は認めず、遠隔転移の進行は、CTCの存在のみでは規定されない。 RCT低肺転移株においても、同様にCTCの回収を行った。CTC回収の際にコロニー形成をする細胞集団を認めた。今後、転移能を規定する因子の1つとして、循環血液中におけるコロニー形成能について解明することが課題の1つである。
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