研究実績の概要 |
我々はこれまで、iPS細胞から作成した骨芽細胞系細胞が高い石灰化基質産生能を有し、HoxB転写遺伝子群が重要な機能を担っている可能性を見出している。本研究では、HoxB遺伝子群に着目し、骨分化誘導時の発現解析を試みた。骨芽細胞様細胞MC3T3の骨分化過程において、Hoxb5遺伝子は分化早期に一時的に発現が認められ、Alp,Runx2,Osterixなどの骨分化マーカーの発現と相関が認められた。また、siRNAによりHoxb5遺伝子をKnock downさせたMC3T3では骨分化誘導後のAlp活性が低下し、石灰化も抑制された。間葉系細胞株C3H10T1/2細胞においても同様に、Hoxb5のknock downにより骨分化マーカーの発現低下が認められたことから、Hoxb5遺伝子は骨分化に重要な因子である可能性が示唆された。また、CXCL12/CXCR4軸が骨分化に関与することが知られていることから、Hoxb5との関連性について検討した結果、マウス横紋筋細胞C2C12細胞をCXCL12で刺激すると、濃度依存的にHoxb5およびCXCR4の発現が増強した。最終年度は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)を用いて、骨分化誘導過程におけるHoxb5,CXCL12,CXCR4の遺伝子発現を確認したところ、骨分化誘導開始7日後にHoxB5の発現、10日後にCXCR4の発現が上昇したが、内因性のCXCL12の発現は骨分化の過程で抑制された。 以上から、造血幹細胞ニッチにおいて間葉系間質細胞(CAR細胞)などの支持細胞による外因性のCXCL12の刺激により、Hoxb5が活性化することでCXCR4の発現を促進し、骨分化誘導を促進する可能性が示唆された。また、骨分化において内因性のCXCL12の発現は低下することから、破骨細胞分化を制御し、骨リモデリングを調整している可能性があると考えた。
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