研究課題/領域番号 |
20K09503
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安藤 渉 大阪大学, 医学系研究科, 招へい准教授 (40833687)
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研究分担者 |
菅野 伸彦 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (70273620)
高尾 正樹 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30528253)
PEZZOTTI G. 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 教授 (70262962)
濱田 英敏 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (90778705)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 特発性大腿骨頭壊死症 / ラマン分光分析 / 自己免疫疾患 |
研究実績の概要 |
特発性大腿骨頭壊死症(ONFH) の病態に関連する因子による病態の違いを、分子・結晶構造評価から探索するため、人工股関節全置換術を施行した症例で得られたONFH骨頭に対してラマン分光法による解析を行った。ステロイド関連が14股、アルコール関連が8股について比較検討した。 手術時に摘出された大腿骨頭をマイクロCTで壊死域と健常域を同定し、中央冠状面のそれぞれの領域からラマン分光分析を行った。ラマン分光器はT-64000(Jobin-Ivon/Horiba Group, Kyoto, Japan) を用いて分析した。ラマン分光器により抽出されたスペクトルをOriginePro 2020 (Light Stone Corp, Tokyo,Japan)を用いてガウス/ローレンツ混合関数により、各分子の波長(940-3000nm)に合わせ波形分離を行った。これまでに確立された正常骨組織のアルゴリズム用いて、固有の分子に対応する波長のラマンバンドの散乱強度を比較した。1) 構造(非結晶/結晶)比 2) 無機組成(CO32-/PO43-)比 3) スフィンゴミエリン 4) フェニルアラニン 5) 脂質/タンパク質比 6) α-helix/disorder について評価した。 ステロイド関連とアルコール関連を比較したところ、5) 脂質/タンパク質比が、ステロイド関連 3.4±3.0がアルコール関連1.3±0.5に有意差有意に高く、アルコール関連とステロイド関連で差異を認めた。 また、ONFH大規模疫学データである新規ONFH患者15049名臨床調査個人票データを解析し、アルコール関連の割合は、性別に関わらず東京と沖縄が全国に比べ有意に多く、地域性があり、地域における飲酒量や遺伝的背景の差異が寄与する可能性があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はCOVID-19の影響による緊急事態宣言がでたことにより、大学における研究が制限されていた期間があったため予定よりはやや遅れていたが。緊急事態宣言解除後には通常通りの研究体制に戻り、その後は研究が進行していた。2021年度は、1月の転勤に伴い、身分の変更等が生じ、その準備等があったため、すこし遅れていたが、転勤に伴う諸業務が完了し研究を再開する環境が整った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は正常骨頭に近い外傷性の骨頭を用いて、大腿骨頭壊死症との比較関連も行い、脂質の強度を検討し、関連因子の違いにより差異がないかどうかを研究し、関連因子の違いを客観的に評価する手法を確立する。過去の報告ではMRI評価で関節リウマチやSLEに対するステロイド治療群で骨髄の脂肪転換を認めるといった報告や、ステロイド関連ONFHの健常域で骨髄脂肪細胞の大きさが増大するといった報告があり、壊死領域において、ステロイド関連ONFHは脂質との関連性が示唆されている。これらについても検討する。 また、症例をさらに蓄積し、ステロイド治療を必要とした原疾患別に比較検討を行うなど、更なる研究の余地があると考えている。マイクロCTによる骨形態学的評価をさらに、組織免疫学的検討を行い、さらには大規模データから得られた疫学データも含め、これらデータを統合的に解析し、自己免疫疾患発症に伴うONFHの病態を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はCOVID-19により当初予定していた国際学会発表ができなかったが、2022年度に国際学会で発表することを含め、研究を進める予定である
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