研究課題/領域番号 |
20K09508
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
稲垣 有佐 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (60707529)
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研究分担者 |
岡村 建祐 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (60812691)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 変形性膝関節症 / ヒト人工多能性幹細胞 / 骨分化 |
研究実績の概要 |
変形性膝関節症(KOA) の早期治療は我が国にとって大変重要な課題であるが、その発症に関与する分子レベルでの反応の詳細については未だ明らかにされていない。申請者は低酸素環境中のラット骨髄間葉系幹細胞(MSCs) が通常酸素環境へ暴露されることで骨形成能が促進されることを既に報告した。本研究の目的は、ヒト人工多能性幹細胞(iPSCs) を用い、上記の酸素濃度変化時の遺伝子発現量の解析等を従来より正確性に重点を置いて行い、その結果から分子レベルでの機序を解明し、KOAのみならず他関節OAの病態解明と、将来的にそれに対応した新規薬剤の開発に資することである。 昨年度までの研究で、iPSCsを通常酸素環境下骨分化誘導培養ではTATA box bindingprotein (TBP)が最も安定しており、最適な参照遺伝子であることが判明した。次に低酸素環境でのiPSCs骨分化誘導実験を施行した。その結果通常酸素環境と異なり、ribosomal protein S18 (RPS18)が骨分化誘導の最適な参照遺伝子であることが判明した。 上記結果をもとに以下検討を行った。酸素濃度を 7%でday 28 まで継続培養した群を H 群とした。酸素濃度を 7%から途中で 21%に変更し day 28 まで培養した群を HN 群とした。各期間のサンプルから RNA を抽出し、未分化マーカー・骨芽細胞分化マーカー・骨細胞分化マーカーについての RT-qPCR を行った。両群とも未分化マーカーは経時的に有意に減少し、骨芽細胞・骨細胞分化マーカーは増加傾向を示した。本研究の結果から、酸素濃度 7%の環境下であっても、培養中に酸素濃度を変化させても、iPS 細胞の骨分化が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の結果から、低酸素環境下であっても、培養中に酸素濃度を変化させても、iPS 細胞の骨分化が示され、実験系が確立された。今後骨分化関連遺伝子の詳細な検討を要するため、研究進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、iPSCs骨分化誘導培養時に低酸素環境から通常酸素環境へと変化した際の遺伝子発現解析を行っていく予定である。さらに人工膝関節置換術時に、同意のもと採取した骨軟骨組織を、まず基本的な組織学的評価を行ったうえで、上記にて選定した分子について免疫染色を行い、実際のKOAの病態にも関与しているかを検証する。またその結果と、検体を採取する膝関節について術前に予め撮像しておいた核磁器共鳴(MR)画像から得た軟骨病変の重症度パラメータとの比較検討も行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響もあり研究課題1~3年目の物品費、旅費等支出が想定より少なく、研究期間延長のうえ、今年度で使用予定である。今後、iPSCs骨分化誘導培養時に低酸素環境から通常酸素環境へと変化した際の遺伝子発現解析を行っていく予定である。さらに人工膝関節置換術時に、同意のもと採取した骨軟骨組織を、まず基本的な組織学的評価を行ったうえで、上記にて選定した分子について免疫染色を行い、実際のKOAの病態にも関与しているかを検証する。またその結果と、検体を採取する膝関節について術前に予め撮像しておいた核磁器共鳴(MR)画像から得た軟骨病変の重症度パラメータとの比較検討も行っていく予定である。
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