研究実績の概要 |
腰痛の生涯罹患率は85%と報告され、超高齢者社会を迎えた我が国における腰痛患者は2,800万人にものぼる。椎間板性腰痛に関する研究の多くは炎症性メディエータに着眼した研究であり、非炎症下での腰痛については明らかになっていない。本研究では非炎症下での椎間板性腰痛メカ二ズムを解明するために、M2マクロファージ由来神経ペプチドの同定と疼痛との関連性を検討した。C57BL/6Jマウスの尾椎から椎間板を採取した。酵素処理後、抗CD11b抗体と磁気ビーズを用いて椎間板マクロファージを採取した。また、骨髄より有核細胞を採取し、M-CSF存在下で培養し、骨髄由来マクロファージを作製した。両細胞群をIL-1β, IL-4, IL10, LPS+IFN-γで刺激し、M1, M2マクロファージへのpolarization後の神経ペプチドの発現を検討した。その結果、IL-4存在下で椎間板マクロファージにおけるPeptide Lvの発現が誘導された。ゲノム編集によりPeptide Lv deficient マウスを作製した。Peptide Lv欠損マウスでは椎間板傷害後のTnfa, Il1bの発現の亢進が認められた。また、LPSによるTNF-a産生誘導はPeptide Lvによって抑制された。このことから Peptide Lvは椎間板傷害に対して抑制的に働く可能性が示唆された。現在、ヒト椎間板組織におけるPeptide Lvの解析と腰痛との関連性を検討している。また、 マクロファージ刺激後の培養上清をMALDI-TOF MSを用いてマクロファージが産生するペプチドを複数同定した。同定ペプチドと腰痛との関連性を検討する。
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