研究課題
筋萎縮を防ぎ、活動量を維持することは超高齢社会を迎えた本邦では健康寿命延長のために重要な課題である。そこで、本研究では「筋小胞体Ca2+再取り込み機能維持による細胞内Ca2+濃度の適正化が筋の恒常性維持に寄与する」という仮説をたて、特に筋小胞体Ca2+再取り込み機能が筋萎縮に及ぼす効果を分子生物学的・生理学的に評価する。我々は骨格筋における筋小胞体へのCa2+再取り込みを抑制する分子であるSarcolipin (SLN) を欠損したマウス (SLN KO マウス) を用いて筋萎縮の程度とその形態を観察した。その結果、除神経により筋委縮を誘導すると特に遅筋のヒラメ筋で野生型に比べてSLN KOマウスの筋委縮の程度が抑制され、筋萎縮誘導に関連するユビキチンリガーゼ (Atrogin-1, MuRF1) の遺伝子発現が減少した。また、SLN KOマウス速筋は野生型マウス速筋と同様に除神経による筋萎縮誘導により遅筋化するが、その程度は野生型より優位に大きかった。一方で、抗酸化ストレス応答は野生型マウスとSLN KOマウスで比較すると、定常状態でもSLN KOマウスでは野生型マウスと比較して有意に低く、特に遅筋のヒラメ筋では萎縮誘導すると抗酸化応答に主要な役割を担うNrf2の発現は増加するものの増加の程度は筋萎縮誘導後の野生型マウスと比較して低いことが分かった。この抗酸化応答シグナルの発現抑制(増加抑制)の原因は不明であるが、今後萎縮筋のCa2+量やその動態との関連を含めて検討していくことが必要であると考えている。
3: やや遅れている
初代筋芽細胞樹立に時間を要したため、in vitroレベルでの細胞内Ca2+動態の検討ができていない。初代筋芽細胞培養に必要な新しい血清が確保できたため、今後実験の遂行スピードを上げていきたいと考えている。
初代筋芽細胞培養に必要な新しい血清が確保できたため、今後実験の遂行スピードを上げ、Ca2+動態やCa2+量を定性的に検証する。
今年度は培養実験を本格的に実施することができなかったため、消耗品等の使用が少なくなった。次年度に本格的に培養系の実験が開始されるため、その部分の消耗品等に充当する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle
巻: 13 ページ: 1864~1882
10.1002/jcsm.12988
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 9168
10.1038/s41598-021-88392-4