研究課題/領域番号 |
20K09514
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
梶 博史 近畿大学, 医学部, 教授 (90346255)
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研究分担者 |
河尾 直之 近畿大学, 医学部, 講師 (70388510)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 筋骨連関 / 慢性運動 / マイオカイン / 骨粗鬆症 / サルコペニア |
研究実績の概要 |
高齢化社会の進展とともに健康寿命の延伸が喫緊の課題となり、骨粗鬆症とサルコペニアの予防・治療が重要となってきた。その中で、骨格筋と骨の相互関連(筋・骨連関)が注目されている。しかし、長期的な運動が筋・骨連関におよぼす影響とマイオカインの役割は不明である。そこで私共は、マウスにおいて、慢性的な運動負荷により、筋で産生され骨に影響をおよぼす新規マイオカインを探索し、その骨代謝におよぼす影響を検討した。8週間のトレッドミル運動を行ったマウス腓腹筋とヒラメ筋の網羅的RNAシークエンス解析により、慢性運動によって筋で発現が増加する因子としてperipheral myelin protein 22 (PMP22) を抽出した。さらに、慢性運動は卵巣摘出による骨量減少を回復し、腓腹筋PMP22発現を増加させた。In vitro解析において、PMP22は骨芽細胞の分化および石灰化を減少させた。一方、マウス骨髄細胞において、PMP22はRANKLによって誘導される破骨細胞形成を有意に抑制した。実験に用いたマウスでの単相関分析によって、腓腹筋とヒラメ筋のPMP22発現量は大腿骨の皮質骨骨密度と正の相関を示したが、海綿骨骨密度とは有意な相関はみられなかった。これらの実験結果より、マウスにおいて、慢性運動は骨格筋のPMP22発現を増加させることが明らかとなった。さらに、PMP22は、破骨細胞形成を抑制する作用により、慢性運動による骨量増加作用に寄与する新規のマイオカインであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、慢性運動が筋と骨の相互作用におよぼす影響とマイオカインの役割を検討することである。昨年度は慢性運動によって筋で産生され骨代謝に影響をおよぼす新規マイオカインとしてPMP22を抽出し、PMP22は破骨細胞形成を抑制することにより、慢性運動による骨量増加に寄与することを見出した。また、これまでの研究成果をまとめ、英文論文として報告した。現在は、PMP22の骨芽細胞および破骨細胞における詳細な作用機序の検討を進めている。従って、本研究課題は当初の計画通り概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見に基づいて、当初の研究計画にそって以下の方策によって研究を推進する。網羅的RNAシークエンス解析により抽出したPMP22について、骨芽細胞、破骨細胞、筋細胞におけるin vitroでの機能解析を進め、作用メカニズムを検討する。さらに、慢性運動によって発現が変動する新規なマイオカインであるPMP22およびアイリシンについて、エネルギー代謝への作用についても実験を行い、詳細なメカニズムを検討する。
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