1)膀胱癌にて経尿道的手術を施行した患者201例から、自然尿および膀胱洗浄液を採取した。各検体からDNAを採取し、nested PCR法を用いてHPV-DNAの有無を確認し、HPVが陽性となった検体において型判定を実施した。自然尿および洗浄液におけるHPVの検出率は、それぞれ9.5%および7.0%であり、高リスク HPV 検出率はそれぞれ 7.5% および 4.0% であった。両検体のHPV型は全く一致していなかった。尿検体からHPVが検出された多くの場合は尿道感染のコンタミであった可能性が示唆された。膀胱洗浄液で検出されたHPVの由来が膀胱であることを証明するために、膀胱洗浄液検体を用いてin situ hybridization(ISH)法にて細胞診評価でHPV-DNAの存在部位を観察したところ、55.7%の検体において、HPV-DNAが尿路上皮細胞の核内に観察できた。次に洗浄液で検出されたHPVが膀胱腫瘍からの由来であるか否かを検討するため、パラフィン包埋組織検体を用いてISHを行ったところ、66.7%の症例で腫瘍組織内にHPVシグナルを確認できた。最終的には洗浄液でHPV陽性であった88.9%の症例で、細胞診もしくは腫瘍組織内にHPV-DNAの存在が確認された。ここまでの実験結果をjournal of medical virologyに投稿した。現在、洗浄液で膀胱内HPV感染を調査できることが分かり、現在、洗浄液でHPVが陽性であった患者からは定期的に洗浄液を採取し、DNA採取を実施し同様にHPV検査を実施している。 2)2021年に前立腺癌106例のHPV検出率を検討し、HPVは11.3%に認められた。今年度には腫瘍関連坦蛋白(E7)の発現を免疫組織化学を用いて調べたが発現は認められなかった。検出されたHPVが腫瘍発生に関連しているエビデンスは得られなかった。
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