研究課題/領域番号 |
20K09521
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
横山 修 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (90242552)
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研究分担者 |
伊藤 秀明 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (00345620)
小林 基弘 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (00362137)
多賀 峰克 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (00529349)
青木 芳隆 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 講師 (30273006) [辞退]
大江 秀樹 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 医員 (70760510) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腎集合管 / 夜間頻尿 / 抗コリン薬 / アクアポリン分子 / デスモプレシン / cAMP |
研究実績の概要 |
抗コリン薬による腎での水吸収に関して、0.9%生理食塩水を静脈内投与して利尿状態をラットに作成した。投与開始2時間後各種薬剤(抗コリン薬3種類、desmopressin)を投与した。尿量モニターとともに尿中Aquaporin-2 (AQP2)蛋白濃度をELISA法で測定、最後に摘出腎を皮質と髄質に分け、AQP2の蛍光免疫染色を行い、またcAMP量をELISA法にて測定した。vehicle(VE)投与群では尿産生のピークが出現したが、imidafenasin (IM)、atropine(AT)、tolterodine、desmopressin(dDAVP)投与群では用量依存性に尿産生が抑制された。摘出腎の皮質では、IMとdDAVPによりcAMPは有意に増加した。AQP2免疫染色において、利尿状態ではAQP2分子は腎皮質集合管の細胞質内に分布したが、IMとdDAVP投与により集合管管腔側へ移動traffickingが認められた。さらに尿中AQP2蛋白の排泄量はIMとdDAVP投与により増加がみられた。尿中のNa+排泄量を測定するとIM高用量で尿Na+は低下した。すなわち、IMにより腎でNa+の再吸収が起こっている可能性が示唆された。 腎集合管にはムスカリン受容体(M1サブタイプ)が存在すると報告されているが、本結果から抗コリン薬はM1受容体遮断を介して腎皮質cAMPの上昇をきたし、集合管AQP2のtraffickingから尿量減少が生じたと推測している。生理食塩水負荷により腎皮質からacetylcholine (ACh)が放出され、AChがepithelial sodium channel (ENaC)のNa+吸収を阻害しNa利尿に働くと報告されている。抗コリン薬はENaCを介してNa+吸収を促進した可能性もあると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
抗コリン薬がなぜ夜間尿量を減少させるのか、膀胱からの再吸収を促進した可能性は前年度の研究で否定され、本年度の研究で腎集合管から水再吸収が生じていることが原因であることが解明された。当初の計画は本年度の研究結果でほぼ達成されたが、今後、責任分子の1つとして腎集合管のムスカリン受容体サブタイプの解明に移行する。
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今後の研究の推進方策 |
臨床的には短時間作用型の抗コリン薬が夜間尿量を減少させることが報告されているが、抗コリン薬が尿量減少をもたらす機序として腎皮質集合管でAQP2が関与していることを初めて証明した。しかし、抗コリン薬のすべてが夜間尿量を減少させるわけでなく、imidafenasinのように血中半減期の短いものもあれば、solifenasinのように長いものもある。またどのムスカリン受容体サブタイプ(M1からM5)がこの効果をもたらしてしているのか解決しなければならない。サブタイプ特異的な拮抗薬を用いてさらに研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は令和4年度に腎集合管のムスカリン受容体サブタイプの検討を行うため研究費を計上した。
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