研究課題
抗コリン薬による腎での水吸収に関して、0.9%生理食塩水を静脈内投与して利尿状態をラットに作成した。投与開始2時間後各種薬剤(抗コリン薬3種類、desmopressin)を投与した。尿量モニターとともに尿中Aquaporin-2 (AQP2)蛋白濃度をELISA法で測定、最後に摘出腎を皮質と髄質に分け、AQP2の蛍光免疫染色を行い、またcAMP量をELISA法にて測定した。vehicle(VE)投与群では尿産生のピークが出現したが、imidafenasin (IM)、atropine(AT)、tolterodine、desmopressin(dDAVP)投与群では用量依存性に尿産生が抑制された。摘出腎の皮質では、IMとdDAVPによりcAMPは有意に増加した。AQP2免疫染色において、利尿状態ではAQP2分子は腎皮質集合管の細胞質内に分布したが、IMとdDAVP投与により集合管管腔側へ移動traffickingが認められた。さらに尿中AQP2蛋白の排泄量はIMとdDAVP投与により増加がみられた。尿中のNa+排泄量を測定するとIM高用量で尿Na+は低下した。すなわち、IMにより腎でNa+の再吸収が起こっている可能性が示唆された。臨床的には短時間作用型の抗コリン薬が夜間尿量を減少させることが報告されているが、抗コリン薬が尿量減少をもたらす機序として腎皮質集合管でAQP2が関与していることを初めて証明した。しかし、抗コリン薬のすべてが夜間尿量を減少させるわけでなく、imidafenasinのように血中半減期の短いものもあれば、solifenasinのように長いものもある。またどのムスカリン受容体サブタイプ(M1からM5)がこの効果をもたらしてしているのか解決しなければならない。現在、サブタイプ特異的な拮抗薬を用いて研究を行っている。
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Life Sciences
巻: 298 ページ: 120504~120504
10.1016/j.lfs.2022.120504