研究課題/領域番号 |
20K09523
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松川 宜久 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (30378145)
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研究分担者 |
山本 徳則 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (20182636)
亀谷 由隆 名城大学, 理工学部, 准教授 (60361789)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人工知能 / 排尿筋低活動 / 下部尿路機能障害 / 低活動膀胱 / AI診断 |
研究実績の概要 |
2020年度は、主に、DU(排尿筋低活動)、BOO(膀胱出口部閉塞)などの下部尿路機能障害についてAI(人工知能)による鑑別・診断システムの開発を行った。 生活の質の低下、日常生活の困窮に関連する下部尿路症状の病態診断には、侵襲的検査である内圧尿流検査などの尿流動態検査を必要とするが、本研究においては、非侵襲的かつ簡便に施行可能な尿流測定検査に注目し、これらの結果をAI技術を用いて下部尿路機能障害診断に応用できないか検討を行った。 具体的には、我々の保有する尿流動態検査を含む患者データベースから、DU(81症例)、BOO(118症例)、BOOとDUの合併(65症例)を抽出し、尿流測定検査で得られた尿流波形を、0.4秒間隔で尿流速のプロッティングを行った。さらにそれらのデータを10分割交差法を用いて、データ量を拡張し、波形の形態などをニューラルネットワークで深層学習させることで、DU、BOO、DU+BOOの診断システムを開発した。今回の開発した診断システムによるDUの診断精度は、感度79.7%、特異度88.7%であり、またBOOに関しても感度76.8%、特異度84.6%であり、高い精度、病態鑑別能での診断システム開発に成功した。 さらに、前向きに実臨床例の尿流波形のみを用いて病態診断精度について、泌尿器科専門医による診断と比較を行ったところ、今回開発したAIによる診断精度は84%であったのに対し、泌尿器科専門医で56%と有意にAIによる診断能が高く、実臨床における応用化に期待できる結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに下部尿路機能障害のAI診断システムの開発に成功したが、今後、他の簡便なバイオマーカも検討に加えて、さらに精度の高い診断システムの構築ならびに、実臨床での応用化を目指した開発を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年以降は、下部尿路機能障害のAI診断システムの実臨床応用化にむけた取り組みに加えて、当研究課題のもう一つのテーマである尿のメタボロミクス解析による排尿筋低活動の形成機序の解明、新規バイオマーカーの開発を行っていく予定である。 AI診断システムの実臨床応用化については、下部尿路機能障害を認めない(正常症例)のデータも加味して、診断システムにより、正常、BOO、DU、BOOとDUの合併を高い診断精度、感度、特異度で鑑別できるように検討を加えていく予定である(実臨床における妥当性、有用性の検討も併せて行っていく)。 また、すでに検討を始めているが、DU症例の尿中のメタボロミクスを網羅的に解析を行うことで、DU診断の新規バイオマーカーの開発、膀胱機能障害重症度との関連性を検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナの影響により、AI診断の研究は予定上に進んだが、尿中メタボロミクスの解析研究は遅延しており、そのため検査費用として計上していた研究費が予定より少なくなったためと考える。2021年度に、前年度研究も含めて計画通り行う予定である。
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