研究課題/領域番号 |
20K09531
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
岩月 正一郎 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (70595397)
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研究分担者 |
窪田 裕樹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (10347403)
武田 知樹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (30814256)
安井 孝周 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40326153)
野崎 哲史 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (50813432)
水野 健太郎 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (70448710)
梅本 幸裕 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (80381812)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精子形成 / 男性不妊症 / 炎症 |
研究実績の概要 |
本研究では、精子形成障害のメカニズムを、炎症に着目して解明することを目的として、精子形成障害のモデル動物における炎症関連物質の発現を開始することから研究を開始した。 精子形成障害のモデルとして、①アンドロゲンシグナル経路の遮断薬投与による内分泌障害モデル、②抗がん剤(ブスルファン)投与による精細胞障害モデル、の2種類のモデルをまずは作成した。 ①のモデルでは、精巣間質の浮腫が生じ、伸長精子細胞を欠損する精細管の割合が増えていることがわかった。さらに様々な炎症関連物質の発現をRT-PCRで検討したところ、IL-1bの発現が増加していることが明らかとなった。何らかの炎症の機序により、IL-1bの発現が亢進し、間質浮腫が増悪している可能性が示唆された。 ②のモデルでは、精上皮の脱落や空胞形成といった異常所見を示す精細管の割合が有意に増加し、精細管径の狭小化が顕著に見られた。さらに、Connexin(Cx) 43の発現が有意に増加していることが明らかになった。Cx43はギャップジャンクションに発現するタンパクで、精子形成において必須の役割を果たしているとされるが、アポトーシスに関与するとも報告されている。これらのことから、直接炎症との関連は今の所明らかではないが、抗がん剤投与による精細胞障害では、Cx43の発現を介して、精細胞の障害が生じているものと考えられた。 現在のところ、2種類の動物モデルにおいて、精巣組織所見の異常と、遺伝子、タンパク発現の変化の一部を観察することができた。今後は、炎症との関連を評価しながら、不妊症患者の精巣組織における炎症関連物質の発現変化を評価をおこなう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画している動物モデルのうち、2種類(アンドロゲンシグナル遮断モデルおよび抗がん剤投与モデル)については精子形成障害、発現変化のある物質の発見には至っているものの、その他のモデルにおいての知見は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後については、当初予定していた網羅的解析についての実施検討を行う予定であるが、初年度の研究結果から得られた発現変化のある物質について、ヒト精巣での発現を検討するとともに、不妊症精巣の精巣障害についての定量評価法を確立することを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、1) 男性不妊症モデル動物を用いて、炎症細胞の浸潤や炎症関連物質(サイトカインや炎症メディエーター)の発現プロファイリングを行う。2) 不妊症患者の精巣組織を用い、動物におけるプロファイリングで同定した炎症機構を、組織学的および分子生物学的に評価する。3)臨床での抗炎症治療への応用をめざし、モデル動物への新規治療を試みるという計画である。計画自体は順調な滑り出しであったがCOVID-19による通常の医療業務が大幅に変更となり、予定していた研究を進めることができなかった。このため次年度使用が生じた。次年度では1)の研究の遅れを取り戻し、2)に進みたいと考えている。
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