研究課題
本年度は、前年度までに得られた結果から、細胞膜貫通型ヒアルロニダーゼTMEM2によるヒアルロン酸分解活性が、当初予想した細胞挙動と異なる可能性が生じたため、TMEM2の酵素活性について詳細な解析を試みた。まず、human TMEM2がヒアルロン酸分解活性がないとする報告が出ていたため、分泌型の組み換えタンパク質を作製し、mouse TMEM2と酵素活性を比較した。その結果、比活性はマウスの方が若干高いがほぼ同等の酵素活性をTMEM2単独で発揮することが明らかとなった。また細胞においてはTMEM2遺伝子をノックアウトしたA549細胞において細胞上清中に未消化と思われる1000kDaを超えたヒアルロン酸が確認され、human TMEM2はヒアルロン酸分解を担うヒアルロニダーゼである事が明らかとなった。当初の予定ではこのヒアルロニダーゼ活性により、前立腺癌細胞の浸潤能や悪性度が上昇すると予想していた。実際、酵素活性阻害抗体を使用したin vitroでのマトリゲルへの浸潤アッセイでは、ヒアルロニダーゼ活性低下により浸潤能の有意な低下が確認された。また他の細胞種(血管内皮細胞や乳癌細胞など)でも、同様の傾向が見られた。しかしながらTMEM2ノックアウト前立腺癌細胞はin vivoへの移植実験では、親株に比べ巨大な腫瘍を形成しており、in vitroで予想した物とは相反する結果となった。生体に移植した細胞とシャーレで培養中の細胞を解析し、メカニズムの解析を進めているが、本年度中での解明には至っていない。
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Molecular Biology Reports
巻: 51 ページ: -
10.1007/s11033-024-09346-3
Journal of Biological Chemistry
巻: 299 ページ: 105120~105120
10.1016/j.jbc.2023.105120