研究課題
東京大学医学部附属病院泌尿器科において手術を行ったVHL病に伴う淡明細胞型腎癌10症例30腫瘍について、DNAおよびRNAを抽出し全エクソンシークエンシングによる網羅的な遺伝子変異解析、RNAシークエンシングによる網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、VHL遺伝子の生殖細胞系列変異のほか、PBRM1、BAP1、SETD2、TP53、PIK3CAなどドライバー変異と思われる体細胞性変異を検出した。また、同一患者であっても異なる腫瘍であれば、遺伝子変異のプロファイルは大きく異なっており、VHL病患者において多発する腎癌は、それぞれが独立して発生していることが示唆された。また、ドライバー変異と考えられる遺伝子変異の内容は、非家族性の淡明細胞型腎細胞癌とほぼ同様であった。また、遺伝子発現解析の結果をもとにそれぞれの腫瘍における免疫環境に関する検討を行った。免疫関連の遺伝子の発現状況に着目することで、腫瘍に浸潤するリンパ球の状態を推測した。その結果、免疫関連の分子の発現が強い”hot tumor”と、それ以外の”cold tumor”に分類することができた。同一症例における複数の腫瘍の免疫環境を比較したところ、同一症例であれば免疫環境も一致するケースが多かったものの、一部の症例では腫瘍によって”hot tumor”と”cold tumor”が混在する場合もあった。このことから、個々の腫瘍における免疫環境は、患者個人に依存しない場合もあることが明らかにされた。
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