研究課題
生物製剤の開発に伴い、様々な免疫治療が確立されている。しかし、その治療の方法は、必ずしも個々の病状・病勢に最適化されていない。そこで、我々は、古典的貪食細胞としてではなく、分化成熟中の「炎症の質」の違いにより、様々な機能に分化するモザイクな好中球の姿に着目した。具体的には、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)治療の治療前・治療中の腎癌患者の末梢血中の好中球を解析した。解析する項目は、T細胞やNK細胞を抑制するmyeloid-derived suppressor cell (MDSC)と呼ばれる好中球の亜集団の指標を用いた。そして、それらの変動が臨床結果や副作用発症と連動するか検討した。その結果、ICI治療中のMDSCの変動と、臨床結果の間に関連性は認められなかった。また、末梢血中の起炎性の液性因子も調べたが、臨床結果との関連性は認められなかった。しかし、ICI治療直前に、GPI-80の発現量の高い好中球が検出された患者は、完全奏功していた。GPI-80は、好中球成熟マーカーであり、活性化により発現が上昇する。このことから、好中球のGPI-80の発現量を事前に解析する事で、ICI治療の完全奏功が実現できるかもしれないと考えた。この発見は、偶然にGPI-80で検出出来ただけで有り、抗腫瘍免疫応答と関連する分子は多数あるはずである。そこで、膀胱癌の治療に用いられているウシ型弱毒結核菌ワクチン(BCG)を用いて抗腫瘍活性型の炎症を誘導するマウスモデルを樹立し、抗腫瘍活性が生じているBCGを投与したマウスの末梢血好中球と、完全奏功した腎癌患者末梢血の好中球に、共通して上昇する分子の同定を試みた。好中球におけるヒトとマウスには、相同遺伝子がない分子が複数存在するにもかかわらず(GPI-80もマウスにはない)、いくつかの共通分子を見出すことができた。
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Biomedicines
巻: 11 ページ: -
10.3390/biomedicines11051296
Bulletin of the Yamagata University. Medical science : Yamagata medical journal
巻: 40 ページ: 1~20
10.15022/00005304
https://www.id.yamagata-u.ac.jp/Imm/h29-takeda/index.html