研究課題/領域番号 |
20K09560
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
元島 崇信 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (60726355)
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研究分担者 |
馬場 理也 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 准教授 (10347304)
三浦 裕司 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (10453698)
神波 大己 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (20402836)
矢津田 旬二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (20749626)
菰原 義弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40449921)
杉山 豊 熊本大学, 病院, 助教 (40709292)
倉橋 竜磨 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (80867945)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腎癌薬物療法 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 腫瘍免疫 / マスサイトメトリー / サイトフ / 複合免疫療法 / 免疫抑制機構 |
研究実績の概要 |
これまで進行性腎癌に対してイピリムマブ+ニボルマブ併用療法を施行した8症例について、術前後、治療前後等時系列のPBMCをCyTOFマスサイトメーターで超多次元に解析し、治療を通した腫瘍免疫ランドスケープの変遷を解析した。研究を進める上でどこの細胞集団に変遷が生じているかを同定するためにまず、①B細胞、②MDSC、③NK細胞、④単球、⑤DC細胞、⑥-1CD8Effector、⑥-2 CD8 Naive,⑥-3 CD8 Central Memory、⑥-4 CD8 Effector memory、⑦-1 CD4 Effector、⑦-2 CD4 Naive、⑦-3 CD4 Central Memory、⑦-4 CD4-Effector memory、⑧-1 CD4 Th1、⑧-2 CD4 Th2、⑧-3 CD4 TH17、⑧-4 CD4 Tfhを同定する抗体を用いて細胞集団の変遷を観察した。まず、②MDSCと⑧-4 CD4 Tfhの細胞集団は末梢血にはほとんど存在しないことが判明した。更に薬剤投与によりCR+PRを得られた症例とSD+PDを得られた症例を比較した結果、治療前後においてNKcellがCR+PR症例で低下しているのに対し、SD+PD症例では増加していた。また、CD4+ effector cell はCR+PR症例で増加しているのに対して、SD+PD症例では低下していた。更に、薬剤投与前の患者の免疫状態が治療に影響を及ぼすかを解析した所、B cell、CD4+ effector、CD4+Th2が多い症例、NK細胞が少ない症例で治療効果が高い事を見い出した。癌免疫療法において末梢血中のCD8+T細胞との臨床的相関はこれまで多く報告されているが、この結果は全身のCD4+T細胞の分化状態に依存している可能性を示唆する全く新たな所見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID19の流行により入院患者が減少して血液サンプルの採取サンプルが減少しているため。
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今後の研究の推進方策 |
解析した結果、①治療前後で変化している細胞集団は、NK cellとCD4+ effector cellであった一方で②薬剤投与前はB cell、CD4+ effector、CD4+Th2の細胞集団が治療効果に関わっている可能性が示唆されている。薬剤効果のバイオマーカーが治療前後で変化する免疫細胞集団なのか治療前の免疫細胞集団なのかは大変興味深い所だが、まだ少数症例なので更に解析するサンプル数を増やしていく予定である。その結果特定した細胞集団をC1 Single-Cell Auto Prepでシングルセル化する。この装置は、微小流体装置の中で細胞を1つずつ独立した反応チャンバー内に捉え、それぞれの細胞ごとにトランスクリプトーム解析を行う事を可能とする。Cytof2による解析で同定した抗腫瘍効果や副作用の発現と相関する新規細胞群のトランスクリプトーム解析を1細胞レベルで行う。T細胞の活性化に深く関与する事が明らかにされつつあるIFNγ/JAK/STAT経路( Gao, J, et al. Cell 2016, 167 (2), 397-404 e9.)や解糖系代謝(Aon MA,et al.Frontiers in physiology 2014, 5, 282.)、アミノ酸代謝(Geiger, R, et al. Cell 2016, 167 (3), 829-842.e13.)を含め、分子機構の解明を目指す。更に、細胞シグナルや代謝経路の制御により、腫瘍免疫再賦活化の可能性を探求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ発生により採取したサンプル数が減少したため差額が生じた。 次年度は、シングルセル解析を行う予定であり、予算を消化する予定である。
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