研究課題/領域番号 |
20K09561
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
惠谷 俊紀 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (30600754)
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研究分担者 |
河合 憲康 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (20254279)
内木 綾 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (20509236)
永井 隆 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (20813447)
安藤 亮介 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (30381867)
飯田 啓太郎 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (30713945)
安井 孝周 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40326153)
内木 拓 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (50551272)
野崎 哲史 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (50813432)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | LSD1阻害剤 / 癌性疼痛 / 前立腺癌 / ホルムアルデヒド / 泌尿器癌 |
研究実績の概要 |
(1) 泌尿器癌におけるLSD1発現の検討:The Human Protein Atlasデータベースを用いて、前立腺癌のほか、尿路上皮癌、精巣癌、腎癌におけるLSD1発現について検討した。核におけるLSD1発現は前立腺癌で20%以上、腎癌では40%以上、尿路上皮癌や精巣癌でも20%前後みられた。LSD1阻害剤は前立腺癌以外の幅広い泌尿器科癌において腫瘍制御や癌性疼痛の治療薬となる可能性が示唆された。 (2) 動物モデルにおける検討:前立腺癌皮下移植モデルおよび骨浸潤モデルにおいて、LSD1阻害剤の投与実験を行った。いずれのモデルにおいても、LSD1阻害剤の投与による有害事象(体重減少や血液生化学検査値の異常)は認められなかった。Von Frey testにおいては、LSD1阻害剤投与による逃避行動の変化は明らかではなかった。また、皮下移植モデルにおいては、長期間観察を行っても骨転移は高率には出現せず、癌性疼痛におけるLSD1阻害剤の効果の検討には骨浸潤モデルを用いる必要があると考えられた。 (3) LC-MS装置を用いたホルムアルデヒド計測:本学に導入されたLC-MSシステム(LC-MS8030 島津製作所)を用いて、ホルムアルデヒドの計測を試みた。除タンパクや誘導体化につき条件設定を行い、UVを用いた計測でホルムアルデヒド試薬を用いてホルムアルデヒドが検出可能なことを確認できたが、PCai1細胞およびPC3細胞の培養液上清を用いた計測では、ピーク形成はいずれの細胞でもみられたものの、未反応のDNPHをみている可能性が否定できなかった。培養液上清におけるホルムアルデヒド濃度が低く、これらのバックグラウンドと判別できていない可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
a動物モデルにおける検討では、Von Frey testは施行できた。しかし、さらなる評価としてはBeam-walking testや投与後の個体の運動量や食事量の観察などを行う必要があると考えられるが現状これらは行えていない。 また、UVを用いた計測では培養液上清におけるホルムアルデヒドを検出するには十分ではないことが示唆されたため、MSを用いた実験の条件設定や、場合によりガスクロマトグラフィーの使用も検討する必要があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
aホルムアルデヒドの測定法については、MSを使用した場合の条件設定を進めていく必要があると考える。ただし、低濃度のホルムアルデヒドの計測となる見込みのため、場合により島津製作所等への委託研究として条件設定を依頼することも検討する。 また、骨浸潤モデルを用いて、Beam-walking testや投与後の個体の運動量や食事量の観察などさらに詳細な行動学的評価を施行すべきと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
エピゲノム酵素の一つ、ヒストン脱メチル化酵素LSD1の阻害薬NCL1による前立腺癌骨転移の難治性疼痛に対する治療薬を開発することを目的とした研究である。計画自体はまずまず順調な滑り出しであったがCOVID-19によって通常の医療業務が大幅に変更となり、予定していた研究を進めることができなかった。国内出張、国外出張にも大きな制限を生じ、とくに国外出張については現実的には不可能であった。このため研究の進行は当初の想定よりも遅れたため、次年度使用が生じた。出張規定については2022年度末からは制限が緩和され、COVID-19高度蔓延国でなければ出張可能となってきた。2023年度においては、動物実験等もさらに進行させ、癌性疼痛の治療効果の検討やそのメカニズムの解析にむけた研究を進めたいと考えている。
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