研究課題/領域番号 |
20K09564
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
橋谷 光 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (10315905)
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研究分担者 |
西川 信之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (30722748)
中森 裕之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (60824349)
三井 烈 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (90434092)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膀胱平滑筋 / 求心性神経 / 副甲状腺ホルモン関連蛋白 / 細動脈 / 一酸化窒素 |
研究実績の概要 |
蓄尿期における、膀胱収縮に起因する求心性神経活動を記録する実験系を開始した。麻酔下ラットで、片側の骨盤神経を近位端で切断して求心性神経活動を記録し、遠心性神経の関与を調べるため、対側骨盤神経を維持ないし切断した。対側切断例においては、膀胱平滑筋の自発活動に由来する一過性膀胱内圧上昇(TPRs)に対応して求心性神経活動の上昇を認め、いずれもL型カルシウムチャネル阻害薬(ニフェジピン)静注により抑制された。対側維持例では、特に蓄尿相後半で大きなTPRsと対応する求心性神経活動を認め、アトロピン静注により大きなTPRsのみ抑制されて、対側切断例と同様の内圧および神経活動が残存した。膀胱平滑筋の進展により放出される内因性弛緩物質である副甲状腺ホルモン関連蛋白 (PTHrP)の静注により、対側神経の維持/切断に関わらず、TPRsと対応する求心性活動が抑制された。蛍光免疫染色では、PTHrP受容体は膀胱平滑筋と血管平滑筋には発現しているが、神経線維には発現していなかった。PTHrPは、蓄尿期に低レベルの遠心性副交感神経作用がある状態でも膀胱平滑筋の収縮を抑制し、収縮に起因する求心性神経活動を抑制することが示された。 尿道の平滑筋・粘膜層および横紋筋層の血流を担う細動脈における神経性収縮制御を、ラットおよびマウスを用いて検討した。尿道細動脈の神経性収縮は交感神経により生じたが、ノルアドレナリン(アルファ受容体)ではなくATP(P2X受容体)が主要な役割を担っていた。神経性収縮は神経性一酸化窒素(NO)合成阻害により増強した。アルファ受容体刺激により収縮を生じた状態では神経性の弛緩を認め、神経性NO合成阻では抑制されなかったが非選択的NO産生阻害により強く抑制され、CGRP受容体阻害では弛緩の後半相が抑制された。神経性弛緩には血管内皮細胞におけるNO産生が重要な役割を担っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染症拡大のため開始が遅れていた求心性神経活動記録を開始し、膀胱収縮に明確に対応する求心性神経活動の性質を検討することができた。対側の骨盤神経が維持された状態では、遠心性副交感神経の作用により、蓄尿相でも膀胱収縮が増強され、対応する求心性神経活動が増強することが示された。さらに内因性弛緩物質である副甲状腺ホルモン関連蛋白が膀胱収縮を抑制することで、求心性神経活動を抑制して蓄尿促進に関わることを明らかにすることができた。これまで虚血性下部尿路症状では膀胱のみが着目されてきたが、尿道における虚血性収縮性障害を考慮して、尿道細動脈の神経性収縮および弛緩機構を調べた。収縮および弛緩いずれにおいても、膀胱の細動脈とは異なる性質を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ラットで確立した求心性神経活動記録を、粘膜筋板を有する種であるモルモットに適応する。既にモルモット膀胱を支配する神経の解剖学的性質と骨盤神経刺激による膀胱収縮は確認しており、膀胱内圧測定も実施している。 これまで十分に検討することができていないPDGFRα陽性細胞の生理病態機能については、荷重梯子上りによるレジスタンストレーニングの効果を正常ラットおよび肥満ラットで検討し、膀胱および尿道のPDGFRα陽性細胞の変化とそれぞれの臓器における収縮性の変化の関連を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加した学会のうち2つがオンライン開催となり、旅費の支出が少なかったため。 繰越額は小さいので、物品費(消耗品)の一部として活用する予定。
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