研究実績の概要 |
前立腺癌の治療としてアンドロゲン除去療法が初期には有効であるが、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)への進行が臨床的問題である。CRPCにいたる分子機構の一つにアンドロゲン受容体(Androgen Receptor;AR)のリガンド結合部位が欠失したSplicing Variants、特にAndrogen Receptor Splicing Variant7(AR-V7)の異常発現が注目されているがAR-V7の役割については不明な点が多い。そこでAR-V7標的遺伝子の解明およびCRPCに対する新たな治療戦略の設立を目的として、次世代シーケンサーを用いたRNA-seq法、ChIP-seq法により遺伝子発現およびAR結合部位、AR-V7結合部位、ヒストン修飾変化の統合解析を行い、AR-V7下流標的遺伝子とその制御を網羅的に同定し、これら下流標的遺伝子の機能解析を行うことを目的とした。 令和4年度は令和3年度に引き続きARを発現するLNCaP細胞株およびAR-V7を発現するLNCaP95細胞株を用いて、ChIPおよび網羅的解析(ChIP-seq)により、ゲノムワイドなAR, AR-V7の標的遺伝子を解明することを試みた。候補遺伝子の発現の比較検討を行い、実際にLNCaP95において発現上昇している候補遺伝子についての絞り込み、またその候補遺伝子がコードする蛋白について前立腺癌細胞における発現、またその機能解析を行い、新たな治療標的となり得るドライバー標的遺伝子を同定を試みた。 また、臨床検体として千葉大学泌尿器科において前立腺生検および前立腺全摘術にて摘出された標本の病理組織標本に対して、機能解析を行ったドライバー標的遺伝子のコードするタンパクの免疫組織学析および組織中の発現解析を行い、臨床データを用いて予後との関連を解析した。
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