研究課題
生後9週の雌C57BL/6マウスの脊髄(第8胸髄―第9胸髄)を完全切断した。その後4週間にわたり連日の徒手的排尿管理を行い、慢性脊髄損傷マウスを作製した。同脊髄損傷モデルマウスを用いて実施した膀胱内圧と外尿道括約筋筋電図の同時測定では、膀胱収縮に先行し外尿道括約筋活動が活性化し、外尿道括約筋活動の静止に続き膀胱内圧の低下と膀胱内注入液の排出が起きることを確認した。この脊髄損傷マウスモデルの確立は、今後の研究を進める上での重要な成果である。Acid-sensing ion channels(ASICs:酸感受性イオンチャネル)がマウスの正常排尿機能と酢酸刺激による頻尿に関与することを明らかにした。同研究成果を論文化し国際学術誌に発表した。この研究では、膀胱壁の伸展により発生した興奮性信号が膀胱求心路から後根神経節に存在するASICsを介して脊髄へ伝達されることを示した。ASIC阻害薬が酢酸刺激誘発の頻尿を緩和したことから、ASICsを標的とした膀胱痛症候群/間質性膀胱炎の治療が可能になるかも知れない。国際共同研究の一環として、アメリカ、カナダ、スウェーデンの研究者等と共に齧歯動物を用いた下部尿路研究に関する総説論文を執筆し国際学術誌に発表した。同論文では、適切な実験方法で下部尿路機能研究を実施するための指針を示している。加えて、トルコのCukurova大学とKahramanmaras大学の研究者等と共に1型糖尿病モデルラットの勃起機能に対するアギ根エキスの効果に関する論文を国際学術誌に発表した。この研究では、同エキスが糖尿病に合併する勃起障害を緩和する可能性を示した。
3: やや遅れている
コロナ禍において、県外在住の代表研究者の往来が著しく制限された。このため、慢性実験が主である研究計画において実験遂行が極めて困難である期間が長く続いたことが大いに影響した。
コロナ禍における県境を越える往来の自粛は研究推進において多大なる妨げとなる。感染蔓延状況を見ながら来県し、必要な急性実験を優先的に実施することとする。
コロナ禍の最中、実験遂行が遅れたため、予定していた物品をいそいで購入する必要がなくなったため。令和3年度に現況が改善されれば予定している実験を行うことが出来、実験に用いる物品の購入が必要になる。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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