研究課題/領域番号 |
20K09578
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤澤 正人 神戸大学, 医学研究科, 教授 (30243314)
|
研究分担者 |
重村 克巳 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (00457102)
青井 貴之 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (00546997)
石田 貴樹 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (10771850)
千葉 公嗣 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (40533766)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | Leydig細胞 / iPS細胞 / NR5A1 / テストステロン / エレクトロポレーション / 免疫隔離デバイス / アルギン酸ビーズ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、テストステロン産生能を有する人工Leydig細胞を作製し、それを免疫隔離デバイスに入れてラットの体内へ移植し、テストステロンを分泌することを確かめることである。 これまでに我々は、ヒトiPS細胞にNR5A1というマスター遺伝子を強制発現させることで、テストステロン産生能を有するLeydig細胞への分化誘導に成功していた。しかし遺伝子を強制発現させる方法としてTet-ONシステムを用いており、このシステムを稼働させるためにはドキシサイクリンを添加し続ける必要があるため、臨床応用に向けて課題を有していた。そこで今回我々は、NR5A1恒常発現系を作製することで、Tet-ONシステムに依存しないヒトiPS細胞由来Leydig細胞を作製することを試みた。具体的には恒常発現プロモーター下にNR5A1を発現するプラスミドをエレクトロポレーション法でヒトiPS細胞へ導入することで、NR5A1を強制発現させ、従来のように分化誘導を行った。しかしこれだけでは培養上清中のテストステロン濃度の上昇が見られなかったため、さらに中胚葉指向性を高めるために培養条件を改良した上で、胚様体形成を介した分化誘導を行った。このようにして得られた細胞における培養上清中のテストステロン濃度を測定したところ有意なテストステロン濃度上昇があったことから、Tet-ONシステムに依存せずにNR5A1を恒常発現し続けるLeydig細胞の作製に成功したと言える。 また、ヒトiPS細胞由来の人工Leydig細胞を、アルギン酸ビーズ化してラットの後腹膜腔に移植したところ、移植20日目に血清テストステロン濃度の上昇(0.36ng/mL)を認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞からLeydig細胞へ分化誘導させるために必要な遺伝子であるNR5A1を発現させるために、これまでの我々の系ではTet-ONシステムを用いて強制発現させてきたが、このシステムを稼働させるためにはドキシサイクリンを投与し続ける必要があり、臨床応用に向けて課題を有していた。今回我々は、エレクトロポレーション法による遺伝子導入と培地の改良により、NR5A1を恒常発現しテストステロンを分泌するLeydig細胞の作製に成功した。従来のようにNR5A1の発現のためにドキシサイクリンを添加し続ける必要がないので、今後の臨床応用に向けて課題を一つ克服したと言える。 実際に免疫隔離デバイスに封入してラットへ移植する実験も行っている。免疫隔離デバイスとしてアルギン酸ビーズを使用し、Leydig細胞をラットへ移植したところ、血清中のテストステロン値の上昇を認めた。しかしテストステロン濃度の上昇を認めたのは移植後20日目のタイミングのみで、その後テストステロン濃度は減少してしまった。また、実際に血清テストステロン濃度の上昇を認めた例はこれまで1例のみと限られている。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒトiPS細胞から作製した人工Leydig細胞について、テストステロン分泌能のさらなる出力上昇や長期維持を目指して、添加する物質や使用するプレートなどの検討を重ね、培養方法の改良を行う。 また、NR5A1恒常発現系の作製についてはエレクトロポレーション法で今回成功しているが、その他の遺伝子導入法でも恒常発現系の作製を試みて、どの方法が最も効率よくNR5A1恒常発現系を得られるのかを検討する。 免疫隔離デバイスを用いたラットへの人工Leydig細胞移植に関しては、移植した細胞を長期間維持させる方法と、ラットへの移植・生着を安定して成功させるための培養環境・手技の改良を行う。
|