研究課題/領域番号 |
20K09581
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
須田 哲司 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40423347)
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研究分担者 |
齋藤 誠一 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80235043)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / SSEA-4 / ST3Gal2 |
研究実績の概要 |
ホルモン療法に対して抵抗性となった前立腺癌である去勢抵抗性前立腺癌は種々の抗癌剤の適応により治療成績が改善しているが、未だ癌特異的生存期間は短く、生存期間延長に向けた新たなアプローチが必要である。 多能性幹細胞マーカーの一つであるStage-Specific embryonic antigen-4 (SSEA-4)は、発生初期の受精卵やES細胞において発現している。近年このSSEA-4は、いくつかの癌においても発現し、悪性度や治療抵抗性と関連を示すことが報告され、がん幹細胞に似た特徴を持つことが明らかになりつつある。これまでに我々は、前立腺癌においてもSSEA-4が高発現し、癌の悪性度と関連することを明らかにしてきた。そこで、本研究では前立腺癌におけるSSEA-4の役割を明らかにすることを目的とした。まず、SSEA-4欠損前立腺癌細胞株を樹立し、全エクソームシーケンス解析によってSSEA-4の欠失によりRNA量が変動する分子群を同定した。さらに、これらの中から、悪性度や未分化性の維持等に関わる分子を選択し、SSEA-4欠損細胞株においてその発現と機能を解析した。その結果、SSEA-4の欠失は広範囲の発現変化を起こし、細胞の性質が変化する知見が得られた。現在、これらの分子について前立腺癌患者における血中量を解析し、臨床所見との関連性解析から診断・治療標的としての有用性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SSEA-4は糖鎖のため、直接ターゲッティングできない。そのため、その糖転移酵素であるST3Gal2のノックアウトにより欠損細胞を樹立した。ST3Gal2欠損細胞と親株との発現解析から、細胞内のSSEA-4関連分子を同定し、シグナルネットワークでクラスタリングした。これら分子の中から、未分化性の維持や悪性進展に関わる分子とその関連分子について、欠損細胞内におけるRNA及び蛋白量を解析し、活性化シグナルを解析した。現在、これらの蛋白について、前立腺癌患者の血清中における分泌量を解析し、臨床所見との関連性解析から診断・治療標的としての有用性を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている前立腺癌患者血清中に検出されるSSEA-4関連分子の解析をさらに展開する。その後、臨床所見との関連性解析からより診断・治療標的として有用性の高い分子を明らかにしていく。また、SSEA-4の細胞内及び細胞外の結合分子の解析も残されており、細胞内での結合蛋白や膜表面での共局在蛋白、シグナル伝達に関わる結合蛋白を同定し、新たな治療標的へと展開していく。 これまでの解析から、SSEA-4は広範囲の遺伝子発現に影響を及ぼすことが明らかとなった。しかし、その発現制御機序は明らかになっていない。そこで、まずSSEA-4が直接的に発現制御に関わる機構の有無を明らかにするため、SSEA-4結合蛋白の解析から明らかとなる蛋白群から、発現制御に関わる蛋白を同定する。さらに前立腺癌細胞株を用いた解析により発現制御機序を検証し、癌細胞の悪性進展とSSEA-4との関連性を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度も概ね計画通りに実験が進んでおり、研究費の使用も計画通りである。残予算で購入可能な物品が限られるため、次年度の物品購入に充足する。
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