研究課題/領域番号 |
20K09582
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
近藤 慶一 横浜市立大学, 附属病院, 准教授 (80363836)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 腎細胞癌 / Single cell |
研究実績の概要 |
今年度は予備実験として腎癌症例に対する手術(腎摘出術・腎部分切除術)で得られた組織の余剰検体からサンプリングを行った。採取したサンプルは培養液中で物理的に細切した後、コラゲナーゼをベースとした酵素のカクテルで可能な限りSingle cellになるまで処理を行った。しかし各組織変により内部の細胞組成が異なるためか、細胞塊がくずせないサンプルも多い。腎癌では細胞の接着性に影響を与える遺伝子(Fibronectinなど)の発現が変化していることが知られており、このままで処理を進めるとこの後の遺伝子解析に入る前から性質に偏り(ばらけやすい)のある細胞集団のみによる実験となってしまう。これでは本来の目的である幹細胞の不均一性の証明が困難になる可能性が高い。そのため現在このSingle cell化の効率の安定化を図っている。 またSingle cell化した細胞を培養してみると、生存率が低く今後の解析に十分な細胞量を得ることが難しいケースが見られる。Single化を進めるために酵素処理時間を長くすると細胞へのダメージが大きくなるためか培養状態での生存率・増殖率が悪い。そのため次年度には培養液の組成や培養環境(ガス組成・温度など)の最適化を行いSingle cellからの培養技術の改善を目指したい。 幸い当科では年間100症例を超える腎癌の摘出術が行われており、使用可能な組織片は十分に得られる。むろん本来の目的であるpT1b以上の症例は限られているため、予備実験により安定的な技術が確定されたのちに目的症例からのMultiple samplingを開始したいと考えている
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度はCOVID-19の流行による緊急事態宣言が神奈川県にも施行されたため、研究室の閉鎖期間が生じた。病院は閉鎖されず、手術は通常どおり施行されたため、サンプリングは可能だったが、その後の培養ができない状況では実験を一時停止せざるを得なかった。現在は研究室が再開され、細胞培養を継続的に行える環境がもどっている。また上述のごとく当科では年間100症例を超える腎癌の摘出術が行われており、使用可能な組織片は十分に得られる。そのため昨年度の実験のわずかな遅れを予定期間内に取り戻すことは可能であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の実験により少なくとも手術検体からSingle cellを回収することは可能であることが実証されたことで、今回の研究の実施可能性は高まったと考えている。しかし上述のごとくSingle cellの回収率および生存性には高いハードルが存在しており、次年度以降の研究期間でいかにこれらの効率を改善できるかが研究の発展の鍵になると考えている。 具体的には、1.これまでに報告されている癌組織からのSingle cellの回収方法を参照として酵素カクテルの組成の最適化をはかる、2.癌組織からの初代培養の確立の報告および限界希釈法によるモノクローン樹立の報告を参照し、細胞培養液の組成や培養環境(温度やガス組成)の最適化を図る、3.幹細胞の分離培養がこの研究の本来の目的である。そのため回収率と生存率がある程度改善された時点で3次元培養+マーカーによる染色による幹細胞の回収技術についても並行して確立していく。 これらの予備実験により幹細胞の可能性がある細胞が得られた時点で、Next generation sequencingを行い幹細胞としての遺伝子的変化の有無について確認する。その際通常培養で増殖させた癌細胞を比較対象として癌幹細胞特異的な遺伝子変化検出の可能性評価も合わせて行う。 これらの実験で腎癌幹細胞の検出が可能と考えられた段階で、pT1b以上の腎癌手術検体からMultiple site samplingを行い、幹細胞レベルでの不均一性の検証に進みたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はCOVID-19の流行により研究室が閉鎖され、基礎研究が滞ったため予定していた研究資材の購入が生じなかった。
|