研究課題/領域番号 |
20K09584
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研究機関 | 群馬パース大学 |
研究代表者 |
荒木 泰行 群馬パース大学, 医療技術学部, 講師 (70833383)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 雄性生殖細胞 / 培養セルトリ細胞 / アガロースカプセル / マイクロカプセル / 3次元培養 |
研究実績の概要 |
昨年度の検討では、1個、5個、10個、20個というような極少数の正確な数のvero細胞をマニピュレーターでピックアップし、20μLの小滴培養液の中で増殖させられることを確認し、さらに直径100μmほどの中空アガロースカプセル内でvero細胞を培養できることを確認した。 その後、SV40 LargeT抗原遺伝子を導入して不死化させたマウス精巣由来細胞を譲渡して頂いた。この培養細胞は、抗生物質であるドキシサイクリン存在下でSV40 LargeT抗原遺伝子が発現するように細工されていて、増殖の可否をコンロトール可能である。また、セルトリ細胞のマーカーであるSOX9遺伝子にGFPが組み込んであり、蛍光顕微鏡にてセルトリ細胞を判別可能である。しかしながら、譲渡頂いた培養細胞はマウスの精巣組織由来であるため、セルトリ細胞以外にも線維芽細胞等が混入している可能性があるので、まず手始めにセルトリ細胞のクローニングを試みた。トリプシン-EDTAにて散在させた細胞から、マニピュレーターを用いて1個の細胞をピックアップし、培養液小滴に導入して細胞1個からの培養を試みた。その結果、増殖成功率は4.2%(2/48)で非常に低かったものの、2系統の株を得ることに成功した。これらの2細胞株は、いずれもSOX9を発現しており、セルトリ細胞であることが確認されている。 ついで、これら樹立したセルトリ細胞の極少数からの増殖効率を把握する目的で、細胞継代時にマニピュレーターにて正確な数の細胞をピックアップし、培養液の小滴に導入して増殖の有無を調査した。その結果、10個で培養を開始した群での増殖成功率は12.5%(8/64)で、20個で培養を開始した群では44.6%(25/56)であり、クローニングしたセルトリ細胞はvero細胞と比較して非常に増殖しづらいという事が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、精子成熟培養に有望と予想しているTM4等の市販されている培養セルトリ細胞を試みる予定でいたが、それよりも本研究目的遂行に有効であると予想されるSV40 LargeT抗原遺伝子を導入させた不死化させたマウス精巣由来細胞を譲渡頂けたことから、順調に計画が進んでいる様に考えている。 ただし、同時に精子先体反応に関する検討を進める予定でいたが、こちらはあまり手が付けられていないのが現状ではある。
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今後の研究の推進方策 |
精子成熟培養の材料であるセルトリ細胞の少数培養における特徴が判明してきたので、本来の目的である、精子体外培養を目的とした支持細胞の立体的な培養構造を構築するために、まずはゼラチンを結合させたアガロースを試すことを計画している。方法としては、まずは境らの報告1)を参考に、ゼラチンが結合したアガロースを作製するが、この作製アガロースに細胞が付着するかどうかの確認が必要なので、このアガロースを用いて直径約60~100μm程度の球体を作製し、培養セルトリ細胞を培養しているディッシュに加えて、球体に細胞が付着するかを確認する。成功した場合は、次のステップとしては、アルギン酸ナトリウムでゲルを作製して、その中に培養セルトリ細胞を埋包させ、更に上記のゼラチン結合アガロースで包み込んだ後に、アルギン酸ナトリウムゲルを溶解させることで、セルトリ細胞を中空のアガロースゲル内に閉じ込めて培養することを計画している。 1) Synthesis of an agarose-gelatin conjugate for use as a tissue engineering scaffold. J Biosci Bioeng 103:22-26. 2007
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた消耗品類が保管分を利用できたことや研究の進捗により未だ購入していない機器の予算により次年度使用額が生じている。これらは、当初予定していなかった顕微鏡画像撮影用のカメラ等の機器の購入に使用することを計画している。
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